目を開け、前を向いた時には尾崎さんと同様、ぶつかった相手は既に立っていた。
但し、尾崎さんの時とは少し違い、仁王立ちしつつ私を見下ろしている。
如何にもわんぱく系の男子という感じの子どもだった。
(なんだか…ぶつかった感じが湯殿町での一件の時の虎次郎さんの時の様です…)
すぐ様立ち上がり、頭を下げる。
私は目の前の男子と目線を合わせるために膝を曲げる。
甚兵衛の様な衣服に身を包んだ、齢10程の男の子・三郎さんは私から一度目を逸らした。
三郎さんは私の言葉を聞くと、ふんっと荒い鼻息を1つしてから、両腕を組んだ。
(困ってしまいました…お面は外したくないのですけれど……)
私がお面を外した後、大半の方は私の顔を見て止まってしまう。
言葉を失ってしまう程だ。
今となってはもう昔の事だが、炭治郎…や伊之助さん、善逸さんの時もそうだった。
(それに大半の方は私の事を気にして下さって、哀れに思って下さっているのか、私を花嫁に選んで下さるのですよね……)
溜息を着きそうになった口を、我に返ってキュッときつく閉じる。
(駄目ですよね!こんな風に後ろばかり振り返って考えてしまうのはいけません!義勇…さんにこれ以上の迷惑をかける訳にも、足を引っ張り続けるのも良ろしくないですし!)
私は「うん」と軽く頷き、気合いを入れ直す。
(こんな考えは頭を振って、振り落としてしまいましょう!!!)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!