第138話

こんな考えは振り落としてしまいましょう
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2020/02/12 21:38
冨岡 義勇
月夜里、大丈夫か?
あなた

わっ、私は大丈夫です!!それよりもぶつかった方は

目を開け、前を向いた時には尾崎さんと同様、ぶつかった相手は既に立っていた。

但し、尾崎さんの時とは少し違い、仁王立ちしつつ私を見下ろしている。
如何にもわんぱく系の男子という感じの子どもだった。


(なんだか…ぶつかった感じが湯殿町での一件の時の虎次郎さんの時の様です…)
おいっ、お前っ!
あなた

は、はい!

ぼーっとしてんじゃねぇぞ!前見やがれ!
あなた

ご、ごめんなさい!

すぐ様立ち上がり、頭を下げる。
ぶつかったのが俺で本当に良かったけどよぉ!お前みたいなやつがこの村でぼーっとしてると死ぬぞ?!
あなた

し、死ぬっ?!ですか?!

何だ、お前、この村で祭りがあるの知らなくて来てるのかよ。
あなた

祭り…ですか?

冨岡 義勇
…何の祭りだ、話せ。
やなこった!お前、凄い偉そうな顔してるからな!鼻につくからお前には教えてやんね!
冨岡 義勇
心外!!
あなた

えっと…

私は目の前の男子と目線を合わせるために膝を曲げる。
あなた

私は、月夜里 あなたです。貴方の名前を教えて下さいませんか?

…三郎。
甚兵衛の様な衣服に身を包んだ、齢10程の男の子・三郎さんは私から一度目を逸らした。
あなた

三郎さん、ですね!

三郎
お前、変な面してるんだな。挨拶は礼儀だろ?なら、面ぐらい外せよ。
冨岡 義勇
あなた

お面は……少し、外せない事情がありまして…

三郎さんは私の言葉を聞くと、ふんっと荒い鼻息を1つしてから、両腕を組んだ。
三郎
はぁ?!なら、教えてやんねぇ!祭りの事も、何にも!
あなた

!!!

冨岡 義勇
三郎
何だよ、何見てんだよ!男!文句あんのかよ!
冨岡 義勇
あなた

えーーっと、…お面を外せば、お祭りの事をお話して頂けるんですよね?

三郎
おーよ!別に無理なら無理でいいぜ!ここの連中は今夜本番の祭りで忙しいから、お前らの相手なんかしないだろうしな!聞くなら俺しか居ねぇけど!
冨岡 義勇
あなた


(困ってしまいました…お面は外したくないのですけれど……)


私がお面を外した後、大半の方は私の顔を見て止まってしまう。

言葉を失ってしまう程だ。

今となってはもう昔の事だが、炭治郎…や伊之助さん、善逸さんの時もそうだった。


(それに大半の方は私の事を気にして下さって、哀れに思って下さっているのか、私を花嫁に選んで下さるのですよね……)
あなた

溜息を着きそうになった口を、我に返ってキュッときつく閉じる。



(駄目ですよね!こんな風に後ろばかり振り返って考えてしまうのはいけません!義勇…さんにこれ以上の迷惑をかける訳にも、足を引っ張り続けるのも良ろしくないですし!)



私は「うん」と軽く頷き、気合いを入れ直す。



(こんな考えは頭を振って、振り落としてしまいましょう!!!)
あなた

(ブンブンッ)

冨岡 義勇
?!
三郎
?!

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