『ドタタタタタッ』
アオイさんが部屋を出て行くと、私と甘露寺さん、炭治郎さんは伊之助さんの元に駆け寄る。
『ドタタタタタッ』
『ドンッ』
・
・
・
一連の騒動は何とか治まり、私とアオイさんが作った桜餅はとても喜んで貰えた。
縁側で蜜璃さんの隣に座っていると、後ろから声がかかる。
私の膝上に置かれた皿の上の桜餅を指さし、皿の中を覗き込む伊之助さん。
(こ、これは…私の分…私の…分ですけど………)
超絶甘党の私には少し辛い判断だった。
が、喉に詰めてしまい、桜餅の本来の美味しさを味わえず、
知らないままこの先を生きていく伊之助さんを思うと、超絶甘党の私は複雑な気持ちに覆われた。
私は桜餅が乗ったお皿を伊之助さんの前に持っていく。
伊之助さんはペロリと食べてしまうと、「美味ぇ!」と叫び、喜んだ。
その姿を見れば、私は桜餅が食べられなかった事など忘れてしまえる。
それ程、伊之助さんが喜んでくれたのが嬉しかった。
蜜璃さんは炭治郎さんが運んでくれた小箱の蓋を開けて、私に首を傾げて聞いてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!