第113話

くさい言葉達
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2019/11/29 15:25
あなた

アオイさん、私は辛くないですよ。

神崎 アオイ
あなた

本当に強くなれているかは、さておき、もう既に1週間程、この生活は続いていますが、私は未だに辛いなんて思った事はないです。

神崎 アオイ
何もそこまで気を使わなくても…
あなた

いえ、本当です。

背中の消毒を済ませたアオイさんに、私は首だけ振り返る。
あなた

今、アオイさんに言われて気づきました。でも、辛いと感じた事は今まで無いです。

神崎 アオイ
本当ですか?
あなた

本当です。

神崎 アオイ
何に誓います?
あなた

私の心に誓いましょう。

神崎 アオイ
あなた

神崎 アオイ
………ぷっ、ぷふふっ、ふふっ、
あなた

ふふふっ、あはは!

信じられないぐらいに格好つけて、「誓う」と言い合った私達はお腹を抱えて笑い出す。
あなた

恥ずかしいですね、アオイさん。

神崎 アオイ
受け身だって、なかなか恥ずかしいですよ。
あなた

いえいえ!言った方が恥ずかしいですよ!

神崎 アオイ
では、次は私が言います。
あなた

どうぞどうぞ。

くさいのが妙に癖になったらしい。

暫くお互いに「誓う」だとか、「運命の人」だとか言って、きゃっきゃっと盛り上がっていた。

笑いすぎも落ち着いたところで、手当を終えた私は衣を着直した。

すると、アオイさんが懐から一通の手紙を取り出す。
神崎 アオイ
あなたさん、今日後藤さんが届けて下さった、あなたさん宛ての手紙です。
あなた

ありがとうございます!

すぐさま封筒を裏返し、差出人を確認する。

差出人は、太一さんだった。
神崎 アオイ
いつもより厚いですね。
あなた

そうですね、何でしょう?

私が封筒の開け口を切ろうとすると、アオイさんは薬箱を持って立ち上がった。
神崎 アオイ
では、私も明日がありますので。
あなた

は、はい!アオイさん、手当といい、手紙といい、ありがとうございました!

神崎 アオイ
…楽しかったので、また手当ついでに来ますね。
あなた

ふふっ、待ってます。それなら、私がアオイさんの部屋に行きますよ。

さっきのふざけ合いを思い出して、また笑い出しそうになった。

私とアオイさんは「おやすみなさい」と言葉を互いに交わすと、アオイさんは静かに部屋を後にした。

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