もし、私が老舗和菓子店を営んでいた祖父母の孫じゃなかったとしても、
きっと私はお菓子に興味を持っただろうし、
甘いお菓子が現状と同じぐらい好きだった事には変わりないだろう。
私は目をキュッと閉じると満面の笑みを浮かべ、
まだ微かに濡れている髪を揺らす。
義勇さんは少し顔を伏せると、「少し出てくる」と立ち上がった。
彼は「いいか、しっかり休め。」と言い残すと、部屋を出て行ってしまった。
(わ、私…何か失礼な事でも言ってしまったのでしょうか…?!?!?!)
義勇さんが部屋の外へと出て行く後ろ姿を黙って見つめる。
つい1人になった部屋の中で呟いてしまう私を他所に、
『バサバサバサッ』
降り立った彼は何度か窓枠を器用につついてから、窓を開けて部屋に入ってきた。
『ビクッ!!』
ゆっくり振り返ると、
私の鎹烏・宇治金時さんが窓枠からピョンッと飛び降りて此方へと寄ってきていた。
『スタスタスタスタ…』
畳の上で弾むように進む宇治金時さんは膝元まで来ると、
正座したままの私の顔を見上げる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。