第45話

大通りにて
22,610
2019/09/12 11:29
太一
あなた!
あなた

太一さん、おはようございます!

宿を出て、町の出入口の門へと進んでいく。
すると、見覚えのある姿が道脇に見えたかと思えば、それは太一さんであった。

大きく手を振る太一さんの元へ私は走り寄った。
あなた

太一さん、今日も朝早くからお宿のお手伝いですか?

太一
え、あ…まぁ、そんな感じ。
あなた

偉いです、太一さんは本当に家族思いですね。

太一
いや、別に…あなたは大袈裟なんだよ。
嘴平 伊之助
コイツの何処が偉いんだ?昨日なんか1人じゃ山下りれずに震えてたじゃねーか、情けねぇ。
太一
煩い!普通は皆、ああなるんだよ!
嘴平 伊之助
はぁ?俺はああはならねぇぜ?!
太一
普通は、って言ってんだ!
あなた

お、お二人共、お静かにです!

嘴平 伊之助
だから、なんでコイツが偉いんだ?
あなた

それは、毎日朝早くからお宿のお手伝いをしてるからです!

嘴平 伊之助
本当はお前に会う為
太一
本当に煩いな!別にそんなんじゃないって!
太一さんは顔を真っ赤にして、伊之助さんの発言を遮る。
それから、私に「大体…」と続ける。
太一
なんでコイツ連れてんだよ!
あなた

ああ…えっと、まぁ色々ありましてですね…一緒に来て貰ったんです。

苦笑いをしながら、私がそう言うと、太一さんはジロリと伊之助さんを怪しむ目で睨んだ。
太一
コイツから変に言い寄られてたりとかしてんじゃない?
あなた

へ?! そ、そんなのある訳ないじゃないですか!

太一
どうかな、コイツならやりかねそうだし!
嘴平 伊之助
あ?何言ってんだ、こいつ?
私は伊之助さんが意味を分かってない事をいい事に、2人をなだめる。
あなた

と、とにかく、まだ朝早いので静かにした方がいいですっ。

嘴平 伊之助
コイツが1人でうるせーんだろ!
太一
は?!なんだよ、コイツ!
あなた

『コイツ』ではなくて、伊之助さんです。それから、伊之助さんも、『コイツ』ではなく太一さんです。

私がそう言うと、一度落ち着いたのか、2人はそっぽを向いた。
あなた

と、取り敢えず、歩きませんか?



太一
あなた、
あなた

はい?

太一
昨日は…ありがと。
あなた

え?

太一
あなたが俺の事を見つけて、助けてくれたから、俺は今も…
あなた

そんな事、気にしなくて良いんですよ。私1人の力で救えた訳ではないですし、私が太一さんに早く会いたかっただけなので。

隣で歩幅を揃えて歩く太一さんに私が笑いかけると、太一さんは私から顔を背けた。
太一
あなたはまたそういう事を…
あなた

え、おかしかったですか?

太一
別に!おかしくは…無いけどさぁ…
ちらっと視線だけ一度私に合わせると、また即座に太一さんは逸らす。
太一
変な虫が周りに来たら言えよ?俺が追い払うから。

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