第50話

私だけ
22,077
2019/09/16 16:17
あなた

と、とうとう柱を派遣して来るとは思いませんでした…

私から少し距離を取った所に立つ、とても綺麗で上品な女性。
鬼殺隊の黒い隊服に、美しい蝶の羽を身につけたような美しい羽織。
紫色の瞳と髪を1束にまとめる髪飾りは大きな蝶だった。
私もですよ。私が貴方を連行する任務を命じられるとは思ってもみませんでした。
あなた

ど、どうしてここが分かったんですか…

そうですねぇ…簡単に言えば、貴方に返り討ちにあった隊士の方々が、貴方の催眠から目覚めたってところでしょうか。
あなた

成程です…、そこから私の居所の情報を得たという事ですね。

そういう事です。勿論、貴方が甘露寺さんをたぶらかしたというのも耳に入っていますが。
あなた

…蟲柱様、

蟲柱様なんて堅苦しいですから、『しのぶ』でいいですよって…あらら、前にも同じ事言いませんでしたっけ?
そう言って、にこやかに笑うのは、


────蟲柱・胡蝶しのぶ。



けど、目は怖くて、心の底ではきっとそんなニコニコしている訳では無いことぐらい、私でも分かった。
あなた

…し、のぶさん、

胡蝶 しのぶ
はい?
あなた

…すみませんが、わ、私はこの土地から離れるつもりはありません。そ、それに、文でもお伝えしたはずです…

胡蝶 しのぶ
はい、それにはちゃんと目を通しましたよ?その上で貴方の本部への連行が決まった訳ですから…
しのぶさんは横髪を静かに揺らして、微笑んだ。
胡蝶 しのぶ
応じない、というのは有り得ませんよ?
あなた

…っ、

私は割烹着の背のリボンを解くと、そのまま脱ぎ捨てる。
胡蝶 しのぶ
それから、逃げ切れるなんて思わないで下さいね?来ているのは私だけではないので。
あなた

っ!

その瞬間、私はしのぶさんの正面へ走る。
と、見せかけて、近くの柱に足を順に付けると空中で一回転をする。
着地した一瞬で、しのぶさんを避けてそのまま外に走り出る。
胡蝶 しのぶ
まぁ…噂には聞いていましたが…成程、これはかなり苦戦する相手ですね。でも、逃げ切れはしないと思いますけど。
胡蝶、
胡蝶 しのぶ
すみません、逃げられちゃいました。短い丈の袴、片耳に藤の花の耳飾り、背の小さな女の子、彼女で間違いないです。姿もお変わりないようで。
了解した。

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