第43話

禰豆子さん
23,142
2019/09/11 13:05
私は片耳の耳飾りに触れる。
あなた

この藤の花の耳飾りと同じ物をしている様なんです。それから、羽織も刀と一緒に置いてあって…

私は刀を握る手に力を込める。
あなた

実は、その羽織から少し変わった鬼の甘い匂いが残っていたんです。だから、その…炭治郎さんの背負い箱の中からも変わった甘い匂いがしたので、どうしても会いたくて…ごめんなさい。

竈門 炭治郎
そうだったのか…
炭治郎さんは立ち上がると、背負い箱を手にし、布団の近くに置いた。
そして、背負い箱の扉に向かって優しく話しかけた。
竈門 炭治郎
禰豆子、出て来て良いぞ。あなたさんはやっぱり悪い人なんかじゃなかった。
『ゴトゴト…ゴトッ』

何回か背負い箱から物音がして、

『キィ…』

と、木が少し軋む音と共に扉が開く。
あなた

…っ。

ノソノソと四つん這いになって出て来たのは、小さな鬼の女の子だった。
立った直後にぐんぐん大きくなって、私と同い年ぐらいの女の子に変わった。

竹を咥え、長い黒髪は先の方が少し朱色っぽい。
前髪は横に流され、白いリボン調の物で結び纏められている。
薄い桃色の瞳に、まつ毛がピンっと伸びて、鬼特有の長く鋭い爪が見えた。
竈門 禰豆子
あなた

あまりに驚いてしまったせいで、上手く声が出ない。

この背負い箱から、こんなに可愛く、同い年ぐらいの女の子姿の鬼が出て来るとは思わなかったのだ。
あなた

…え、あ、の…

竈門 炭治郎
俺の妹で、禰豆子というんだ。
あなた

ね、ずこさん…

竈門 炭治郎
そう。禰豆子、こちらは月夜里 あなたさん。俺達と同じ鬼殺隊員だ。
竈門 禰豆子
暫く禰豆子さんと目が合う。
すると禰豆子さんはそのまま私の方に歩いて来た。
じっと見つめる禰豆子さんの目に、私は動けなくなってしまう。


(似てます…、炭治郎さんの目と、凄く、似てます…)


私は息をするのも忘れて、禰豆子さんを見つめ続けた。
竈門 禰豆子
あなた

…っ、、

竈門 禰豆子
…むーー!
禰豆子さんはニコッと優しそうな笑みを浮かべると、いきなり私に抱きつく。

『ギュゥ…』
あなた

?!?!?!

私はどうすれば良いのか分からなくて、すぐさま3人の顔を見る。


既に足を布団から放り出し、大の字になって寝ている伊之助さん。

微笑ましい姿を見たからなのか、和やかな顔をする炭治郎さん。

それから、何故か興奮気味の善逸さん。
我妻 善逸
た、炭治郎、俺、夢でも見てんのかな…、ね、禰豆子ちゃんとあなたちゃんが…俺、やっぱり選べねぇよ、どっちかなんて!
竈門 炭治郎
善逸、あなたさんも禰豆子もお前は選べないよ。
我妻 善逸
おい、そんなにはっきり言わなくてもいいだろ。





もう夜もかなり遅いので、そろそろ就寝しようという事になった。
禰豆子さんは私を好きになってくれたらしく、私と一緒の布団で寝る事になった。
竈門 炭治郎
いいか、禰豆子。あなたさんは疲れているから、しっかり休ませてあげるんだぞ。
竈門 禰豆子
むっ、むっ。
兄の言う事に頷くと、私の布団の中へ少し幼くなった姿で入った。


(か、可愛いです…わ、私もこんなに可愛くて、べっぴんさんだったら良かったのに…)


禰豆子さんの体温が触れる度に、人肌が寂しかったのか、私の身体がどんどん癒されていく感覚がした。
禰豆子さんは私の顔を見ると、「むっ。」と言って、にっこりとまたその微笑ましい顔を見せる。
あなた

おやすみなさい、炭治郎さん、善逸さん、伊之助さん。そして、禰豆子さん。

私もつられて笑うと、そのまま目を閉じた。

最後の禰豆子さんの顔は少しきょとんとしていた気がする。


(何故でしょう…?私、何か言葉の選択がおかしかったのでしょうか…(汗))


少しすると周りから寝息や鼾が聞こえてきた。
私は相変わらず眠れずに、天井をぼんやりと眺める。
そして、少し、泣きそうになってしまった。


(ごめんなさい、炭治郎さん、善逸さん、伊之助さん、禰豆子さん…)


罪悪感や何か後ろめたい気持ちがあるのか、私の胸は苦しくなってしまった。


(今は、私がこの刀の持ち主を探している事しか話せません…どうか、)


私は瞳を閉じた。


(許して下さい。)

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