第175話

鉄拳とナイフ
7,827
2020/10/27 17:00

殴られた瞬間に私を襲うのは、皮膚や内側の肉までもが挟み千切られるような痛み。

思わず片目を瞑り、殴られた横腹を押さえようと刀が手から滑り落ちそうになる。



だが、

少しでも痛みで気が緩めば次の攻撃を防げない。


間合いに入り込まれたせいで上手く刀を振れない上に、

体を捻りながらなんとか避けるので精一杯だ。



(なら…)


次々に向かってくる拳に、身体でも十分な固さを持つ肘で防ごうと試みる。

『ガンッ』
あなた

っ……………!!!!!




が、

それは私の想定外へと繋がった。



ニッと笑ってみせた私の懐にいる部下の拳には、指輪状の金属器が幾つも連なっている武器が拳に付けられていた。


(通りで肘で受けようにも受けられない訳です。)


すぐさま大きく開けられた男の足を払い、

刀を持ったまま両手を地に付けて男の顔面を蹴り上げて後ろへと下がる。
あなた

はぁっ、はぁっ、はぁっ…


ほんの数十秒間だというのに、

私の体はあっという間に悲鳴をあげ、肩で息をしなければ上手く酸素を取り込めずにいた。


しかも、息をする度に体のあちこちに痛みが走る。
あなた

…っ、、


息を止めていないと次の攻撃を読んで避ける事が出来ない速さの殴打。

無理に慣れない肘で鉄金属付きの拳を受けてしまった為、刀を持つ手が痙攣し始める。

『カタカタカタカタカタカタ…』


(早く何とかしなければ)


『ズバッ!!!』
あなた

?!


『カキンッ、カンッ!』

視界に真っ直ぐと飛んで来た何かに即座に刀を打ち落とした。

ぶつかる金属音が鋭く耳につんざく。

バラバラと私の足元に落ちたのは、歯に粘液が塗られた複数の短いナイフ。


(もしや、これは…)
部下
我々の攻撃を避け、防ぐなんて流石です。普通なら即仕留められているものなのですが。
あなた

お褒め頂き、ありがとうございます。

部下
因みに、もうお気づきかとは思いますが毒薬です。あなた様は毒への耐性が無いとお聞きしまして。
あなた

部下
安心して下さい、眠って頂くだけです。

私の身体の特性を調べ、弱点である毒への耐性が無い事に目をつけた。

本当に毒薬が塗られたナイフを私に投げて来るとは…


(それだけ、本気、なのですね。)


そう簡単には逃げられないのだと突きつけられた現実に、

私はぐっと刀に力を入れ直そうとした刹那、




相手の方が上手だった事に気付く。











『グラッ、』
あなた

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