第97話

『かぐや姫』と呼ばない先輩隊士
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2019/10/28 19:38
彼は先輩隊士方に体を向けると、今度は少し強めの口調で言った。
あんまり月夜里さんに構いすぎるなよ?ここの手伝いやら救護やらで忙しくしてるんだからさ。
鬼殺隊士
…すみません、気をつけます。
先輩隊士方からすると、彼の方がどうやら先輩に当たるらしい。

先輩隊士の方々がこの場を立ち去ると、彼は私の顔を伺いながら少し笑った。
さっきの様子じゃ、また囲まれていたみたいだな。月夜里さんに興味本意で近づいてくる奴はまだまだ居るんだから、気を付けないとダメだぞ。
あなた

あはは…仕方がないと言えば、仕方がないのですけどね…

まぁ、ああいう奴らには俺からガツンと言っといてやるから!心配しなくていいからな!先輩に任せろっ!
少し胸を張った様子を見せる彼に、私はクスッと笑ってしまう。
あなた

本当に頼もしい方ですね。

嘴平 伊之助
あなた

伊之助さん?

黙って彼を見ていた伊之助さんに私は問いかける。
嘴平 伊之助
………小便漏らしが何言ってんだ!
だから、漏らしてないって!
あなた

?!

唐突の伊之助さんからの言葉に驚きを隠せない。
彼と目が合うと、私は首と手を大きく横に振りながら言葉を添える。
あなた

そ、そんな時もありますよ!色々な事情が人にはありますから!状況にだって左右される物ですし

だから、漏らしてないって言ってんだろーがっぁあ!
少し高めの彼の声が廊下に響く。
私は彼が笑う姿や声が何故か自分にとって、深く好ましく感じられた。





────鬼殺隊士の村田さん。




私を『かぐや姫』と呼ばない、初めて身近に出来た先輩隊士の名前だ。







村田さんがたまたま来て下さった事で、何とか伊之助さんと先輩隊士方が衝突せずに済んだ。
村田
じゃーなっ、あんまりフラフラしてるとまた絡まれるぞ!
あなた

はいっ!気をつけます!

村田
猪のお前も頑張れよ!
嘴平 伊之助
お前もな!せいぜい漏らさねぇ様になれよ!
村田
だから、漏らしてねぇわぁっ!!
村田さんはそう叫び残すと、片手を上げて、何度かこちらを振り返りながら、『タッタッタッタッ』と走って行ってしまった。


(わ、私も早く行かなければ…後藤さんと前田さんが待っていらっしゃいますっ…(汗))


私は伊之助さんの真正面に立ち、猪の被り物の目と目を合す。
あなた

伊之助さんも、ありがとうございました。私の為じゃないとしても、伊之助さんが来て下さって、本当に嬉しかったです!

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