私は布団の端を少し握り、天井を見つめたまま話を続けた。
祖父母とも布団を並べて寝てはいたんですけど、和菓子屋さんを営んでいるものですから、早寝早起きの為に二人共ゆっくり寝るまで話す、なんて事は無くて…
一瞬こちらを見た炭治郎さんと目が合う。
私は自分のことを話すのが少し恥ずかしくて、それを隠す為に笑ってみる。
それに祖父が私をあまりに大事にするものですから、お友達なんてなかなか出来なくて…そもそも外にもあまり出させて貰えなかったんです、私が稀血だと知っていたから、かもしれませんが。
あー、でも、分かるよ。俺もあなたちゃんの親見になってみたら、あまり外には出したくないよ。変な虫がついたら困るし。
変な虫?
そう、すぐに口説いてきたりする輩だよ。でも大丈夫、これからは僕が守ってあげるからっ。ムフフ
それ、お前じゃねーか。
いや、違うから。全然っ、違うから!!
それにしても、あなたさんの祖父母はあなたさんが稀血って知ってたんだな。
はい、確かに珍しいと思います。実は…その…どうやら身内の方に鬼殺隊の剣士が居たみたいで…だから知っていたのかも知れませんね。
え、あなたちゃん、稀血なの?
はい。なので、鬼がすぐに吸い寄せられて来てしまうんです。
私は「はははは…」と苦笑いをしながら、またぼんやりと天井を眺める。
…
…
…
…
暫く沈黙が流れた。
気まずいとも、居ずらいとも思わない沈黙は初めてだった。
虫の声と何処からかする小さな物音でさえ、よく聞こえる。
…ごめんなさい、
え?
分かっています、本部に私を連行する事が任務の一部である事。皆さんは私を見つけてしまった以上、放置は出来ませんよね。
私は静かに身体を起こすと、掛け布団に掛かる自分の影をじっと見つめた。
それでも、皆さんに会えた事が私は凄く嬉しいです、幸せです。今まで私を連行しようとする鬼殺隊の皆さんは、私の話なんてなかなか聞いて下さる余裕が無いようでしたから…
影は部屋の灯りが揺れるのに伴って、ゆらりゆらりと穏やかに揺れる。
皆さんとなら、この土地を離れて目的を果たせるかもしれない…
なら、
でも、駄目なんです。ごめんなさい。
私は炭治郎さんの言葉を遮って振り返ると、炭治郎さんの目は少し悲しそうな目をしていた。
たとえ、皆さんと一緒でも、ここから離れはしません。なので、どうか、このまま…
私は寂しくなる胸の内を隠して続けた。
(本当はこのまま3人さんが居続けて下されば、って思ってます…それこそ無理な話です。)
お引き取り下さい。
いいねして作者を応援しましょう!
この小説を読んだ方は、こちらの小説も読んでいます
- ノンジャンル
失敗作少女
冷炎を恨んだ
favorite 163,749grade 11,536update 2日前 - ファンタジー
最強、入隊します。
十三歳にして最強、 最速の呼吸の使い手。
favorite 27,506grade 4,187update 2024/03/25 - 青春・学園
ぶりっ子のフリっておもろくね?
『及川さぁぁん♡かっこいいですぅ♡』 (女にキャーキャー言われてっからって調子こいてんじゃねぇぞゴラ!) 『キャー!岩泉先輩ナイスキー♡』 (うぉぉ!!今のすげぇ!!) 『国見くんサボっちゃ、めっ!だよ!』 (センター分けの癖にサボんな) この小説の参考等は受け付けておりません。ご了承ください
favorite 307,006grade 15,824update 2024/03/30 - 恋愛
ただ、貴方の背中だけを……
中学で観た兄の試合で、忘れられない人と出会った__。 振り向いてほしい。 悲しませたくない。 応えたい。 でもどうしようもなく、好き。 行き交う“好き”のキモチ。 貴女が最後に選ぶのは、変わらず彼……? それとも……。 甘酸っぱい、切ない、恋の行方____。 ✑☁︎︎序章編..2話~340話 ✑☁︎︎本編編..344話~764話 ✑☁︎︎最終章編..766話~ ・ ・ ・ ※落ち不明 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✁キリトリ✁ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー こんな事あらすじに書きたくないけど、パクリなどは絶対にやめてください。
favorite 566,662grade 15,804update 2日前 - 青春・学園
運動神経の優れた私の正体は…【完】
椚ヶ丘中学校 3年E組を卒業した私が烏野高校で男子バレー部のマネージャーとして送る高校生活の物語! ―――――――――キリトリ線――――――――― ・原作と異なる事多々 中学時代の作品はコチラ👉https://novel.prcm.jp/novel/tlGdipuniFd7EtQqovoQ この度、この作品の漫画版を描いて頂きましたっ! 漫画版の作品はコチラ👉 https://novel.prcm.jp/novel/5ceRyBkKmpPB6ZduEdP0
favorite 179,895grade 6,256update 2日前
が好きなあなたにおすすめの小説
コンテスト受賞作品
もっと見るショートドラマ&アニメーション原案募集コンテスト
公式TikTokの注目動画
もっと見るチャレンジ小説
もっと見る- 青春・学園
哀を謳って
人生はあっという間だ いつまで生きていつ消えるかは分からない いつ消えてもおかしくない少女”柚希 紗和” 彼女の傍にずっといたい少年”和泉 蒼” 今日も2人で哀を謳う_ 「私ね…もう__」 「___。」 Man lives freely only by his readiness to die.
- ホラー
転ばないで
俺たちは何ら変わらない学生で 遊んで、勉強もして 夢も持って目標に向かって 学校生活を送っていた。 毎日が変わりない楽しい日々 こんな風に大人になっても 馬鹿みたいに笑って 社会の愚痴言って 友達と繋がるもんだと思っていた。 ただ、その当たり前が崩れたのは "あの日"がはじめてだった。
- 恋愛
コスモス
コスモス~Flower of life that does not~ あれから5年の月日が経った初夏。大野莉沙、18歳。お互いの心を変える運命の出会いをした影山星護とは、別々の高校へ進み、今では付き合ってもう2年。そんな2人は、いよいよ高3になり、それぞれ、これから進んでいく道に悩んでいた。そんな時不良から更生するため必死で努力する星護の前に突然、事件の発端となるある人が現れて・・・。 心はいつも繋がっている。たとえ離れても。ずっと。 悲惨な現実に泣き崩れる星護と、大きな選択を迫られる莉沙。すれ違っていく2人の思いはどう進んでいくのか┄┄。 ✩前作『クライアイ』(2021・春 完結 )より。 ✩『クライアイ』┈┈┈5年前、主人公・莉沙と星護の13歳の頃のストーリー。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!