第41話

お引き取り下さい
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2019/09/17 20:05
私は布団の端を少し握り、天井を見つめたまま話を続けた。
あなた

祖父母とも布団を並べて寝てはいたんですけど、和菓子屋さんを営んでいるものですから、早寝早起きの為に二人共ゆっくり寝るまで話す、なんて事は無くて…

一瞬こちらを見た炭治郎さんと目が合う。
私は自分のことを話すのが少し恥ずかしくて、それを隠す為に笑ってみる。
あなた

それに祖父が私をあまりに大事にするものですから、お友達なんてなかなか出来なくて…そもそも外にもあまり出させて貰えなかったんです、私が稀血だと知っていたから、かもしれませんが。

我妻 善逸
あー、でも、分かるよ。俺もあなたちゃんの親見になってみたら、あまり外には出したくないよ。変な虫がついたら困るし。
あなた

変な虫?

我妻 善逸
そう、すぐに口説いてきたりする輩だよ。でも大丈夫、これからは僕が守ってあげるからっ。ムフフ
嘴平 伊之助
それ、お前じゃねーか。
我妻 善逸
いや、違うから。全然っ、違うから!!
竈門 炭治郎
それにしても、あなたさんの祖父母はあなたさんが稀血って知ってたんだな。
あなた

はい、確かに珍しいと思います。実は…その…どうやら身内の方に鬼殺隊の剣士が居たみたいで…だから知っていたのかも知れませんね。

我妻 善逸
え、あなたちゃん、稀血なの?
あなた

はい。なので、鬼がすぐに吸い寄せられて来てしまうんです。

私は「はははは…」と苦笑いをしながら、またぼんやりと天井を眺める。
あなた

我妻 善逸
竈門 炭治郎
嘴平 伊之助
暫く沈黙が流れた。
気まずいとも、居ずらいとも思わない沈黙は初めてだった。
虫の声と何処からかする小さな物音でさえ、よく聞こえる。
あなた

…ごめんなさい、

竈門 炭治郎
え?
あなた

分かっています、本部に私を連行する事が任務の一部である事。皆さんは私を見つけてしまった以上、放置は出来ませんよね。

私は静かに身体を起こすと、掛け布団に掛かる自分の影をじっと見つめた。
あなた

それでも、皆さんに会えた事が私は凄く嬉しいです、幸せです。今まで私を連行しようとする鬼殺隊の皆さんは、私の話なんてなかなか聞いて下さる余裕が無いようでしたから…

影は部屋の灯りが揺れるのに伴って、ゆらりゆらりと穏やかに揺れる。
あなた

皆さんとなら、この土地を離れて目的を果たせるかもしれない…

竈門 炭治郎
なら、
あなた

でも、駄目なんです。ごめんなさい。

私は炭治郎さんの言葉を遮って振り返ると、炭治郎さんの目は少し悲しそうな目をしていた。
あなた

たとえ、皆さんと一緒でも、ここから離れはしません。なので、どうか、このまま…

私は寂しくなる胸の内を隠して続けた。


(本当はこのまま3人さんが居続けて下されば、って思ってます…それこそ無理な話です。)
あなた

お引き取り下さい。

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