『ザッ、ザザッ、ザッ』
夢中になって歩き進める度に、花に止まっていた蝶が舞い始める。
ひらひらと舞う蝶に囲まれて、私はやっと振り返った。
私はバッと大きく手を広げて、クルクルと回ってみせる。
空を見上げ、夏の匂いが混じりつつある風を感じ、花畑と私の足が奏でる音に耳を傾ける。
大きく息を吸う度に、吐く度に、何度も心地良いと感じる。
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花畑や景色等を満喫した私は、アオイさんや炭治郎さん達を思い出し、善逸さんの元へと戻った。
座り込んだままの善逸さんが器用にも何かを編み込んでいく。
手元の動きで何かを作っているのが分かった。
近くの花を摘み取っては編み、摘み取っては編むを繰り返している。
(白詰草でしょうか…?)
私もその場で座ると、今まで花畑に埋もれていた善逸さんの手元を覗き込む。
そこには可愛い花冠が。
────すか?と、首を傾げて聞こうとした時、善逸さんの手が私の頭の上へと運ばれる。
『ファサ…』
善逸さんは花冠を頭に乗せられた私を見て、少し恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
私とチラッとだけ目を合わせる。
それから真っ直ぐに私を見ている訳ではないけれど、人差し指で頬をかきながら続けた。
『ブワァッ…』
強めの風が2人に吹き付けた音なのか、それとも私の顔が赤く熱くなったものなのか。
分からなかった。
風で乱れる髪を耳元に手を当てて押さえる。
心音がいつもより早く鳴っている。
(ど、どうか、この胸の音が善逸さんに聞こえませんようにっ…//////)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。