突如、大きく揺れた視界に私は声を漏らした。
膝からガクンと力が抜けていく感覚が私を襲い、あっという間に私の両掌は地へと付けられる。
(どう、なっ、、、て…)
小刻みに震える両手を地面に付けたまま、上半身を支えるのが精一杯だった。
心做しか、息もしにくい。
上手く酸素を取り込めない。
『ポタッ、ポタタッ…』
体中から妙な汗が一気に吹き出し、
体温が急上昇している事が分かった。
地面に描かれる無数の水玉模様を見つめ、
私は苦しいのを面に出さないように微かに笑った。
顔を上げて拳を武器にしていた部下の1人に視線を向けると、彼は両掌を広げてひらひらと動かした。
『バサッ』
話の途中で身体を支えられなくなった私の両手は崩れ、私は地面の上に音を立てて倒れ込む。
(毒の…回りが、早、いで、す……)
今でも何度も殴打されて出来た傷口から毒が染みていく感覚が分かる。
冬場のガラス窓に出来る結露のように、視界の端からどんどん曇っていき、
刀を握る指先にすら力が入らない。
辛うじて瞼を閉じないようにと必死に意識を保つのみだ。
息がしづらい。
頭の思考回路は停止直前、もう何も考えられない。
2人の部下は横たわった私の前に来ると、ゆっくりとその場でしゃがみ込んだ。
部下の1人が肩、背中、膝の裏へと手を回してグッと抱き上げると、あっと声を上げる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。