第4話

背負い箱
47,619
2019/08/22 09:24
口をあんぐり開けて、私を見ている花札の鬼殺隊士。
あなた

あ、怪しいですけど、ちゃんとした日輪刀だと思いますよっ!多分…

花札の鬼殺隊士
た、確かに鬼は斬れたけど…本当にそんな日輪刀が…?
あなた

さぁ…どうなのでしょうか?実は私の所有物では無いので。

花札の鬼殺隊士
?! 君の刀じゃないのか?!
あなた

はい、違います。…そうです、お名前をお伺いしても宜しいですか?

花札の鬼殺隊士
ああ!俺は竈門炭治郎だ!
あなた

炭治郎…さん、ですね、はい。

竈門 炭治郎
君の名前も教えてくれ!
あなた

月夜里つくよざと あなたです。

竈門 炭治郎
月夜里つくよざと あなたさん、かぁ…綺麗な名前だ!
あなた

ありがとうございます。…ところでなのですが、炭治郎さん、

『チャキッ』

私は次に刀の先を、炭治郎さんに向ける。
あなた

お喋りは一度、終いにしませんか?

竈門 炭治郎
え?
あなた

私、嗅覚は基本的鈍いんです。けど、唯一甘い匂いだけは人一倍鋭いのです。

竈門 炭治郎
あなた

炭治郎さん、人や生き物にはそれぞれ違う甘い匂いを持っています。勿論、鬼もです。

私は日輪刀の刃を再び見えないようにした。
あなた

炭治郎さんからは鬼特有の甘い匂いが混じっています。

ふぅっと息を吐くと、炭治郎さんの顔をみる。

目を見開き、口をしっかり閉じて、私を見ている。

どうやら合っているらしい。
竈門 炭治郎
俺は鬼殺隊士だ。鬼を倒す為にこの刀を振っている。俺は人間を相手に振ったりはしない。
あなた

も、勿論です!わ、私も炭治郎さんを相手に剣を振ったりなど、したくありませんっ。ただ…

私は掌を上に向けて、催促する形で両手を差し出した。
あなた

その背負ってる箱を頂戴したいのです。

竈門 炭治郎
っ…!!
あなた

炭治郎さんには何もするつもりはありません。その背負い箱の中の鬼さんにだけ用があるのです。

竈門 炭治郎
…駄目だ!
あなた

竈門 炭治郎
月の真下の静寂の森の中で、私と炭治郎さんは無言になった。

少しの間、じりじりとお互いに言葉では引かない、黙りの時間だけが過ぎていく。
あなた

そ、それは…困りました…。

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