春もかなり過ぎ、朝の冷え込みもだんだん少なくなっていく。
何度か瞬きをするが、目がしょぼしょぼするのに加えて、瞼を閉じて暫くすれば、あっという間に夢の世界へと吸い込まれそうだ。
眠い目を擦りながら、身支度を済ませると、昨夜にしのぶさんに頼まれたお萩作りに取り掛かる。
(本当にしのぶさんは好きなんですね…)
下拵えを済ませ、さて作ろうかと、襷の端を咥えてササッと慣れた手順で袂が邪魔にならない様に襷掛けをする。
不意に少し大きめの欠伸をした時だった。
振り向くと、調理場の入口の影からこちらを覗く善逸さんの姿があった。
既にきっちり着替えられた隊服に黄色い羽織。
何処かへ出掛けるのだろうか、寝癖を直すのも含めて身支度をしっかり終えている。
(やりたい事って何でしょう…?)
慌てて口に手を当てると、軽く頭を下げる。
(…そもそも、何故、炭治郎さんや伊之助さんだけなのでしょう…?何かお二人さんに隠し事でもなさってるのでしょうか…??)
ふと疑問に思い、そのまま考えていると、「あ、あのさ、」と善逸さんが瞳を盛んに動かしてから私に話し掛けた。
キョロキョロと辺りを見渡して、屈んだ状態なので、いつもより小さくなっている善逸さん。
挙動不審な善逸さんの傍で私は首を傾げて待っていると、善逸さんは一度咳払いをしてから私に向き直る。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。