私は苦笑すると、炭治郎さんの方へ一気に蹴り出す。
炭治郎さんは危険を察したのか背負い箱を下ろし、その箱の少し離れた前に立った。
『ドサッ』
私は刀を持ったまま、炭治郎さんを蹴り倒す。
が、刀は炭治郎さんの前腕で弾かれる。
お互い腕を掴み合って攻撃を阻止する。
私は歯を食いしばり押し続けるが、炭治郎さんの力は強すぎて、私なんぞの力では押し返すのがやっとだ。攻めることなど出来そうにない。
『ドサッ…』
あっという間に炭治郎さんの力に負けてしまい、今度は私が下になる。
揉み合いになっている最中に、飛んできた叫び声。
(だ、誰なのでしょうか…?)
『ドドドドドッ』
凄い勢いで土煙が上がっている。
土煙を起こしているのは…なんと、1人の男の子を持ち上げて走る、謎の生き物だった。
猪の頭皮を被り、「猪突猛進!」と走っている。
頭は猪、身体は人間という、今まで見たことの無い生き物に私の頭は一瞬混乱に陥る。
上半身は鍛えられた裸体で、下半身には隊服の長袴だけを履き、腰には2本の刀をさしている。
『ドスンッ』
猪人間に投げ捨てられる様に下ろされた男の子は、
なんとも鮮やかな黄色のおかっぱのような短髪だった。
毛先には橙に染められており、
炭治郎さんと同じく黒い詰襟の隊服を着用。
上から髪色と同じような黄色の生地に鱗模様とも言うべきか、
白い三角形が散らされている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!