第87話

いざ、裏山へ!
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2019/10/14 07:50






(ど、どうしましょう…わ、分かってはいましたが…)


窓から差し込む光を目に入れる度に、不安になる。
今にも日が暮れてきそうだ。


(ぜ、善逸さんが帰ってきません…!)


神崎 アオイ
遅いですね、彼ら。
あなた

はっ、はいっっ!

神崎 アオイ
?!…ど、どうしましたか、あなたさん。
あなた

へっ?!あ、いえ!何でもっ、無いっですっ!

神崎 アオイ
………(ジトーーー)
あなた

…(汗)

無言で私に視線を送り続けるアオイさんに、私は思わず目を逸らす。
神崎 アオイ
先程から手も止まってますし、何かあるのでは?
あなた

えっ、あ…

自分の手元に視線を落とすと、テキパキと裁縫を進めアオイさんと比べて、私は全く進んでいない。


(善逸さんには2人だけの秘密って言われたけど…心配だし…でも…いや…)

あなた

じ、実は…カクカクシカジカで…

神崎 アオイ
成程、それでなかなか戻って来ないので心配になってきた、と。
あなた

は、はい…いつもはもう少し早く帰って来てたと思うんですけど…いや、早く終わるどうこうの問題ではないことも分かっては…

神崎 アオイ
彼らなら多分心配ありませんよ。私達がそうこうしてる間に帰って来るでしょうし。
あなた

そ、そうですよね…

それからは淡々と裁縫を済ませるアオイさんを見習い、私も集中して取り組んだ。
今まで止まっていた手を盛んに動かし、不安や心配の気持ちが外にダダ漏れにならない様に努めた。









とうとう裁縫箱を仕舞うまでに時間は経過し、私はとぼとぼと廊下を歩く。

気づけば調理場へと足を踏み入れていた。


(さ、裁縫箱を持ったまま、こんな所に来るなんて…)


何気なく側にある調理台に裁縫箱を置いた時だった。

『バタバタッ』
あなた

?!

我妻 善逸
ごめん、あなたちゃんっ、ハァハァ、遅…ハァハァ、なっちゃっ…ハァハァ、てハァハァ…
息を切らし、柱に手をかけた善逸さんは私にそう言うともう一度「ごめんねっ、」と付け足した。
あなた

し、心配しました、な、何かあったのかと…

我妻 善逸
いや、特に大した事は何にも無いんだけどね?!炭治郎が急に町に行きたいとか言っててさ…てかさっ、今日稽古してくれる柱がさ、凄い無理難題を…って、早く行こう!アイツら嗅ぎつけて来ちゃうから!
あなた

へっ、へぇっ?!

「い、今からですか?!」とも、「ちょ、ちょっと待って下さい!」とも言わせない早さで調理場を出た。

善逸さんに手を引かれて、蝶屋敷を裏口から静かに出ると、あっという間に山の中に入る。

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