下ろしていた髪を1つに纏めると、私は木刀を構えた。
意外にも人数が多く、その中には炭治郎さんと善逸さんもいる。
前方に居た鬼殺隊士が木刀を大きく振り上げて、向かってくる。
私は木刀が振り下ろされる直前に半歩下がると、相手の刀を持つ手首を素早く弾いた。
『ガタンタンッ…』
木刀が手から滑り落ちるのを確認する。
そう叫んでから、向かって来た隊士の横顔に木刀の柄の先で殴り込む。
その場で崩れた鬼殺隊士が落とした木刀を、近くの木刀が入った筒状の物の中になおす。
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それからは少しだけ大変で。
でも、なんとか炭治郎さんと善逸さんの何人か意外は、木刀を持つ手首や手の甲を軽く弾き、蹴りや足を払ったりして体勢を崩させた。
悪戯に隊士の皆さんを傷つけず、私も無理をしない最善の相手の仕方だと思った。
けど、風柱様はどうやらお気に召さなかったらしい。
木刀を手にした風柱様は、私に木刀の先を向けた。
『ビュンッ』
風の如く、私の間合いに入ったかと思えば、次の瞬間には刀が振られていた。
切れの良い疾風が風柱様の木刀から発生しているからか、掠っただけの耳が妙に痛い。
『ガンッ』
私は木刀の沿っている部分で受けると、そのまま下へと流した。
一振り受けただけなのに、掌がじんじんと痛む。
強い衝撃に耐えた私の手首は心なしか、細かく震えている気がする。
(こ、呼吸って私の『菓子の呼吸』の事でしょうか…?)
私には "今" 、『菓子の呼吸』が使えない事情がある。
月が出ていないから等という、それどころの問題ではない。
寧ろ、月が出ていなくても『菓子の呼吸』は使える。
ただ本領が発揮されないだけだ。
だが、本気で "今" は使えない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。