第61話

呼吸が使えない
21,346
2019/09/24 21:19
下ろしていた髪を1つに纏めると、私は木刀を構えた。
意外にも人数が多く、その中には炭治郎さんと善逸さんもいる。
鬼殺隊士
あなた

鬼殺隊士
あなた

…大丈夫ですよ、私の事は気にしないで下さい。

鬼殺隊士
…御免!
前方に居た鬼殺隊士が木刀を大きく振り上げて、向かってくる。
私は木刀が振り下ろされる直前に半歩下がると、相手の刀を持つ手首を素早く弾いた。

『ガタンタンッ…』

木刀が手から滑り落ちるのを確認する。
あなた

ごめんなさい!

そう叫んでから、向かって来た隊士の横顔に木刀の柄の先で殴り込む。
鬼殺隊士
…うっ…
その場で崩れた鬼殺隊士が落とした木刀を、近くの木刀が入った筒状の物の中になおす。
鬼殺隊士
嘘だろ…あの女…侮ってる暇無いんじゃないか?
鬼殺隊士
負ける訳にはいかねぇ…
竈門 炭治郎
凄い…まるで、踊ってるみたいだ…




それからは少しだけ大変で。

でも、なんとか炭治郎さんと善逸さんの何人か意外は、木刀を持つ手首や手の甲を軽く弾き、蹴りや足を払ったりして体勢を崩させた。

悪戯に隊士の皆さんを傷つけず、私も無理をしない最善の相手の仕方だと思った。

けど、風柱様はどうやらお気に召さなかったらしい。
不死川 実弥
テメェ…何ふざけた戦い方してんだァ…?
あなた

?!

不死川 実弥
妙な動きしやがってよォ…
あなた

す、すみません、、

不死川 実弥
構え方も刀の筋から何もかもが未熟じゃねェか。それで今まで鬼を狩ってただとォ?笑わせんな。
木刀を手にした風柱様は、私に木刀の先を向けた。
不死川 実弥
テメェはここに居る奴らよりも弱ェ。
あなた

不死川 実弥
なぜなら、
『ビュンッ』

風の如く、私の間合いに入ったかと思えば、次の瞬間には刀が振られていた。
あなた

っ!

不死川 実弥
基礎が出来てねェからだ!
切れの良い疾風が風柱様の木刀から発生しているからか、掠っただけの耳が妙に痛い。

『ガンッ』

私は木刀の沿っている部分で受けると、そのまま下へと流した。
不死川 実弥
ほォ…やるじゃねェか。
あなた

はぁ…はぁ…

一振り受けただけなのに、掌がじんじんと痛む。
強い衝撃に耐えた私の手首は心なしか、細かく震えている気がする。
不死川 実弥
呼吸が使えるらしいじゃねェか。使えよ、お前の呼吸。
あなた

こ、呼吸…?

(こ、呼吸って私の『菓子の呼吸』の事でしょうか…?)
あなた

っ…す、すみませんが、それは出来ません。

不死川 実弥
あァ?
あなた

ご、めんなさ、い。

私には "今" 、『菓子の呼吸』が使えない事情がある。
月が出ていないから等という、それどころの問題ではない。

寧ろ、月が出ていなくても『菓子の呼吸』は使える。
ただ本領が発揮されないだけだ。



だが、本気で "今" は使えない。

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