第122話

『炭治郎』
14,502
2019/12/20 15:20
私は握られた温かい手と優しい声、透き通る様な仄かに香る甘い匂いに、また心地良さを覚える。

炭治郎さんの開いた足の間に座り込んだ私は、上手く言葉が出ずに、喉元で多数の言葉が混雑していた。
あなた

あ、の…//

竈門 炭治郎
ご、ごめん。つい心配になっちゃって…手は痛くなかったか?
あなた

だ、大丈夫です…//

こんな時にでも、私の握られた手首はじわっと熱を帯びていた。

慌てて離した炭治郎さんの手が今度は私の頬へ触れる。
竈門 炭治郎
何かあるなら、何でも言っていいんだ。あなたさんはもっと俺達に甘えたってバチは当たらないさ。
あなた

…っ、

竈門 炭治郎
大丈夫、俺はいつだってあなたさんの味方だから。
炭治郎さんは少し頬に触れた手の親指で私の頬を撫でる。

私はその手に自分の両手を重ねた。
竈門 炭治郎
あなたさん?
あなた

嬉しいです…私、嬉しいです。

竈門 炭治郎
あなた

そう言って貰える方が傍に居るという事実だけで、凄く嬉しいです。

竈門 炭治郎
あなた

炭治郎さん、

私は炭治郎さんのその誠意に応えることを、

そして、


これからの私へと宣戦布告を決めた。
あなた

私の話を聞いて下さいますか?

竈門 炭治郎
勿論!俺で良ければ何だって聞く!あなたさんの力になりたいんだ。
あなた

ありがとうございます。

竈門 炭治郎
後、これは俺の勝手な頼みなんだけど…
あなた

頼み、ですか?

竈門 炭治郎
うん。聞いてくれる?
あなた

はい!

竈門 炭治郎
俺の事を『炭治郎』と呼んでくれないか?
あなた

え…!

竈門 炭治郎
お互い同期で鬼殺隊に入ったんだし、そっちの方がまたあなたさんとの距離が縮まる気がするんだ。
あなた

で、でも、急には…その…(汗)

竈門 炭治郎
大丈夫。俺もあなたって呼ぶから。
あなた

へっ?!

竈門 炭治郎
ほら、いくぞ…『あなた』。
『ブワッ…』

頬が紅潮するのが自分でもはっきりと分かる。

暗い納戸の中だからこそ、私の真っ赤な頬が炭治郎さんに見えていない事がせめてもの救いだった。
竈門 炭治郎
ほら、あなたも呼んでみてくれ。
あなた

私は…その…もう少し、時間が…/////

竈門 炭治郎
なら、一緒に言おう。ほら。た、ん、じ、ろ、う、って。
納戸の中はいつの間にか、私には灼熱地獄の様に感じて、思わず外に出ようと戸を開けようとする。

その手を炭治郎さんは止めて、私に『駄目だ』と主張してきた。
あなた

…っ、、///

竈門 炭治郎
あなたが呼んでくれるまで出さない。
あなた

きょ、今日の炭治郎さんは、い、意地悪、です…

竈門 炭治郎
い、意地悪…そんなに嫌だったのか…
あなた

い、嫌じゃない、です、けど……心臓がバクバクうるさいんです…その、…

竈門 炭治郎
あなた

た、たん…『炭治郎』と居ると。

竈門 炭治郎
そんなに緊張するのか…以後、気をつ…
炭治郎さんは言いかけた言葉を止めて、私の顔を見た。
見開いた目から赤みがかった瞳が、隙間からの弱い月光でキラッと光る。
あなた

…/////

竈門 炭治郎
…///



互いの赤面は顔を手で覆っても、


溢れ出るように甘い匂いがした。

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