第66話

"今" の私には
20,925
2019/09/27 10:14
御館様
暫くはしのぶがあなたの事をみてくれるから、安静に、しっかり言う事を聞くこと。守れるね?
あなた

はい。

御館様
それから、今宵は新月だね。新月の日に無理をしてはいけないよ、あなた。
あなた

御館様が知っているとは思わなかった。

私が新月が昇る日は全集中の呼吸が使えないという事を。

そして、今宵はその新月だ。

だから、風柱・不死川実弥さんとの一戦に使いたくても使えなかったのだ。


(…一体、どこまで御館様は…?)
御館様
あなた

冨岡 義勇
胡蝶 しのぶ
沈黙が流れる。
私は何だか居ずらくなって、そわそわしてしまいそうなのを必死で堪えた。

更に、挫いた足で身体を支えるのが妙に辛い。
御館様
…何か話したい事はあるかい、あなた。
あなた

えっ、

冨岡 義勇
胡蝶 しのぶ
突然の振りに私は戸惑った。
聞きたい事は勿論ある。
けど、この場で聞いて良いものなのだろうか、と、私は少し悩んだが、勇気を出して進む方を選んだ。
あなた

…ふ、文でお伝え致しました様に、わ、私は行方不明となった母を探しています。

冨岡 義勇
あなた

母が背に『滅』の字が施されている隊服を着ているのを一度だけ見た事があります。日輪刀を持つことからも、母が鬼殺隊士である事は間違いありません。

胡蝶 しのぶ
あなた

大きな花の羽織に、刃の透き通った日輪刀、藤の花の耳飾り…これに該当する隊士の方を…お、御館様はご存知、無い…でしょうか…?

御館様
御館様は何も言わずに再度私に優しく微笑んだ。
あなた

…?

その微笑みには何か意味がある様だが、私には分からなかった。
御館様
あなたのお母さんの事は勿論知っているよ。
あなた

御館様
でも、私の口からは "今" のあなたには教えてあげられない。
あなた

"今" は…ですか?

御館様
うん。あなたに1つだけ聞いてもいいかな?
あなた

はい。

御館様
もし私があなたに10人目の柱になって欲しい、とお願いした時、あなたはどう答える?
あなた

……へ?



胡蝶 しのぶ
では、蝶屋敷に戻りましょうか。
あなた

は、はい…

『もし私があなたに10人目の柱になって欲しい、とお願いした時、あなたはどう答える?』



先程の御館様の質問が、ふと脳内で蘇る。
私は驚きと戸惑いのあまり、答えれずに居ると、御館様は穏やかな表情のまま続けた。



『次に会えるのは柱合会議だね。その時にでも、答えを教えておくれ。』



私は「はい。」という一つ返事しか出来ず、水柱様としのぶさんと共に部屋を出た。





御館様の屋敷を出ると、しのぶさんが私に振り向いた。
胡蝶 しのぶ
それにしても、よく我慢しましたね。
あなた

えっ、

胡蝶 しのぶ
足、痛めていませんか?
あなた

ど、どうして気づいたのですか?

胡蝶 しのぶ
落ち着きが無い様にずっと身体が動いていましたし、痛みを出来る限り感じないように歩いているのか、歩き方が妙です。
あなた

じ、実は、あ、足を挫いてしまって…

胡蝶 しのぶ
不死川さんとの一戦の際ですね。
あなた

そう、です…

沢山の人を診てきただけあって、人の様子を見ただけで気づけるなんて驚く他ない。
胡蝶 しのぶ
まだ歩けますか?
あなた

はい、勿論です!

冨岡 義勇
無理をするな。俺が背負おう。
あなた

だ、駄目です!

私は背後から声を掛けて下さった水柱様に、両手を振って遠慮した。
あなた

歩けますから!大丈夫です!

冨岡 義勇

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