深澤side
体調が優れない俺は
皆とは違う小さな楽屋を用意して貰った
楽屋に置いてあるソファーに寝転がると
ソッと毛布を掛けてくれるマネージャー
『…ありがと…』
ピーピー
脇に挟んでいた体温計が鳴る
それを見る元気もない俺は無言で
マネージャーに渡す
マ「…38.5…」
頭が痛く、視界がぼやける…
マ「…コンサート…欠席しますか?」
『いや、出るよ』
マ「…無理しない程度でお願い致します」
そう言ってマネージャーは楽屋を出ていった
ピロン
寝ようと目を閉じると鳴る携帯
うっすら目を開けるとあなたからだった
文字だけであなたが今どんな表情を
しているのか分かる…
それを考えるだけで可愛くて…
早く会って抱きしめたい…
あなたがコンサートの事だけを
考えれるように…
なるべくあなたに心配かけないように
俺は小さな嘘をつく
コンコン
あなたとL〇NEをしていると
誰かが扉をノックして楽屋に入ってくる
扉の方に目をやると
小さな袋を持ったマネージャーが
こっちに向かってくる
その袋を俺に渡し
マ「あなたさんが深澤さんに渡して欲しいって」
袋の中を見ると
みかんのゼリーが入っていた
懐かしい…
俺たちがまだ幼かった頃
俺が体調を崩すとあなたは必ず
このみかんのゼリーを俺にくれた。
マ「ゼリー無いと薬飲めないからって言ってました」
そう言って俺に薬を渡して楽屋を出る
昔はゼリーと一緒に飲まないと
薬が飲めなかった俺はいつも
あなたから貰ったこのゼリーで
薬を飲んでいた
ふふっ、
もう水で飲めるのに…
懐かしい気持ちで
みかんのゼリーを1口食べる
『…あまっ…』
昔は大好きだったこの味も
大人になった俺には甘かった
.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。