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第9話

( Ⅸ )
あの日から約2週間が経ち
今日は始業式でした。
1年生最後の学期です。

あれから黒尾先輩に会うこともなく
毎年と同じように年を越し
衛輔くんとこと2泊3日の旅行をした。

衛輔くんは部活で来れなかったけれど
お土産を渡しに行った時は
とても嬉しそうにしていた。

クラスでのホームルームも終わり
今から帰るところ。

衛輔くんは部活なので
私は一人で帰ると彼に連絡をした。
今日はバイトもないし
家でゆっくりしようと思った。
間宮 薫
間宮 薫
七海帰るの?
朝倉 七海
朝倉 七海
うん、衛輔くん部活だし
間宮 薫
間宮 薫
そっか〜
写真は撮りに行かなくてもいいの?
薫たちにはまだ話せていない。
また心配をかけてしまうから。
朝倉 七海
朝倉 七海
ん〜カメラ持ってきてないんだよね
間宮 薫
間宮 薫
そっかそっか。
じゃあ、気をつけてね
彼女にそう言われて私は教室を出た。

(そういえば最近バレー部の写真
 撮りに行ってないな…)

でも体育館に行けば黒尾先輩がいる。
話すのは気まずいけど
見るだけなら、大丈夫だよね。
いつも通りでいるって決めたんだから。

私は体育館のギャラリーに向かった。

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バレー部はレシーブ練習をしていた。
「護りの音駒」と言われるくらい
守備に長けたチーム。
もちろん攻撃力もあるが
ボールを落としたら負けなスポーツである
バレーボールで「繋ぎ」はとても重要になる。

音駒はボールを落とさない
守備に力を入れているのだ。

その要となるのが、衛輔くん。
彼のポジションは昔からリベロだった。
背が低いということを感じさせないくらい
逞しく大きな背中。

音駒は全員レシーブが上手い。
それは練習を見ていても分かる。
(全員Aパス…)
洗練されたレシーブ技術…
その中でも一番なのが
"衛輔くん"なんだと改めて感じた。

一方黒尾先輩はというと…
ジャージを着ていた。
いつもならみんなをまとめて
練習しているのに…
どうしたんだろうか…

__________________

休憩に入った時、研磨くんが
ギャラリーに上がってきた。
孤爪 研磨
孤爪 研磨
あれ?どうしたの?
朝倉 七海
朝倉 七海
カメラないけど
写真、撮りに来たんだ
孤爪 研磨
孤爪 研磨
そっか、いつもありがと
朝倉 七海
朝倉 七海
ねえ、研磨くん
孤爪 研磨
孤爪 研磨
ん?
朝倉 七海
朝倉 七海
…黒尾先輩、どうしたの?
孤爪 研磨
孤爪 研磨
…クロ?
朝倉 七海
朝倉 七海
うん
彼は全て教えてくれた。
昨日の練習試合で
相手チームのブロッカーの足の上に乗ってしまって捻挫をしたらしい。
靭帯は切れていないし、そんなに重くないと思うけど
1週間は絶対安静だと猫又先生に言われたらしい。

孤爪 研磨
孤爪 研磨
大丈夫なんじゃない?
朝倉 七海
朝倉 七海
え?
孤爪 研磨
孤爪 研磨
クロ、多分大丈夫だよ
彼はそう言って下に降りていった。
コートの端に立つ彼は前より少しだけ小さく
自信がないように見えた。

いつもの黒尾先輩は
責任感があって大きくて
頼もしくて、"キャプテン"って感じだけど
今は、どこか悲しそうにしている。

__________________

(何か声をかけてあげたい…)

でもきっと、今の私にはそんなことできない。
彼を慰める言葉も彼と話す勇気も
今の私は持ち合わせていない。
__________________

練習が終わったようなので
私は玄関で衛輔くんを待つことにした。

(黒尾先輩大丈夫かな…)

そう思っていると…
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
七海ちゃん?
朝倉 七海
朝倉 七海
…黒尾、先輩…!
足を引きずりながら私の元に来る彼。
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
久しぶり、だね
朝倉 七海
朝倉 七海
あ、はい…
彼は少し嬉しそうに話していた
朝倉 七海
朝倉 七海
…足、大丈夫ですか?
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
うん!なんてことないよ
朝倉 七海
朝倉 七海
よかった…
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
七海ちゃん
朝倉 七海
朝倉 七海
はい?
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
あのさ、あの日…
あの日。
彼が琳華さんのところへ行った日。
朝倉 七海
朝倉 七海
あ〜…
夜久 衛輔
夜久 衛輔
七海!
私が話そうとした時
衛輔くんが声を掛けてきた。
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
夜っ久ん
夜久 衛輔
夜久 衛輔
お前足、まだ痛めてんだろ
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
大丈夫…
夜久 衛輔
夜久 衛輔
大丈夫じゃねえだろ
1週間くらいゆっくり休めよ
同じ3年生だからこそ言える衛輔くん。
全員で同じ舞台に立ちたいからこそ
厳しいことも言えるのだろう。
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
…ありがとう。そうするよ
黒尾先輩も納得したみたいだ。
夜久 衛輔
夜久 衛輔
戻ってきたら
またみっちりレシーブ練習だな!
彼らは笑いながら話していた。
微笑ましかった。
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
…七海ちゃん、あのさ
朝倉 七海
朝倉 七海
はい?
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
連絡先、交換しよう
彼がそれを言ったのはとても急だった。
朝倉 七海
朝倉 七海
連絡先、ですか?
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
うん
彼は私の連絡先を登録した。
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
ありがとう
じゃあ、またね
朝倉 七海
朝倉 七海
はい。また…
彼はそう言って帰っていった。

(急にどうしたんだろう?)
不思議に思ったけどとても嬉しかった。

衛輔くんと帰っていると
ケータイの通知音がなった。
(誰だろう…)

ケータイを取り出し画面を開くと
黒尾先輩からメッセージが来ていた。
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
"連絡先交換してくれてありがとう"
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
"急にごめんね"
私は「大丈夫ですよ」と返信をして
彼からまた返ってくるのを待った。

黒尾先輩が返す頻度は結構早く
私が送った数分後には返ってきた
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
"ありがとう、実はね…"
その後の文章を見て
私は胸がドキッとした。
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
"会えなかったの、寂しくて。
 これならいつでも話せるなと思って"
諦めたはずなのに。
もう、彼のことを追わないって決めたはずなのに
どうして、こんなにも嬉しくて
胸が苦しいんだろうか。

(……ずるい、ほんと…)

彼からの返事はどれも嬉しくて
ずっとこのまま仲良くしていたいなと思った。

琳華さんのこと忘れてほしい。
私が彼の1番になりたいと思ってしまった。