彼が連れてきてくれたのは
ある公園だった。
私が上を向くと
星が綺麗に輝いていた
隣に座った彼を見ると
私の顔の目の前に、彼の顔があった
彼が私の名前を呼ぶ。
真っ直ぐに伝えられた。
とても温かくて優しい声だった。
黒尾先輩らしい言葉で。真っ直ぐに。
私の目から涙が溢れた。
それを優しく殴ってくれる黒尾先輩
泣かないで、と言いながら
抱きしめてくれた。
大事なものを壊さないように、優しくぎゅっと…
耳元で言われたその言葉をまだ信じられないくらい、嬉しかった。
彼からの告白 ____________。
絶対叶うことのない恋だと思っていた。
好きな人が、ずっと琳華さんだと思っていた。
わたし、頑張ってよかった…
とても幸せな日だった。
黒尾先輩の彼女になれた日。
黒尾先輩の隣にいてもいいんだ。
それから私は黒尾先輩のことを
"黒尾くん"と呼ぶようになった。
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付き合って約2ヶ月。
私たちは進級し、新入生が入ってきて
いつも通り学校生活を送っています。
バレー部にも新入部員に加えて
可愛い可愛いマネージャーさんが
入ってきたみたいです。
衛輔くんはそのマネージャーさんに
ベタ惚れです。
毎日聞かされるので困ってます。
マネージャーの名前は
早川 聖奈(はやかわ せな)ちゃん。
たまに写真を撮りに行く時、
聖奈ちゃんと少しだけ話したことがある。
その時は名前を知らなかったが
とても親しみやすい感じの子だった。
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学校に着くと薫とひいちゃんがいた。
私たちは3人で教室に行った。
教室に行くまでに3年の黒尾くんのクラスの前を通らないといけない。
廊下に男女が立っていた。
その男女は黒尾くんと聖奈ちゃんだった。
とても楽しそうに話す2人。
そういや最近、黒尾くんと帰っていない。
連絡は取り合うけど会って話すことは
前より少なくなった。
(もうすぐ2ヶ月記念日なのにな…)
そう思いながら、黒尾くんの教室の前を通ろうとすると…
と、彼が笑顔で言ってきた。
(久しぶりに声聞いたな…)
手を振ってくれたので、私も振り返した。
薫とひいちゃんに冷やかされながら
教室に向かった。
「おはよう」の言葉を交わすだけだったけど
少しでも声が聞けて嬉しかった。
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授業が終わり、研磨くんが話しかけてきた。
彼は少しだけ暗い顔をしていた。
何かあったのか聞いてみたが
何でもないと言われた。
(どうしたんだろう…)
私は気になりながら体育館のギャラリーに行った。
ギャラリーにいた衛輔くんもいつも通り。
(研磨くんどうしたんだろ…)
そういや聖奈ちゃんの話をしたとき
少しだけ嫌そうな顔をしていた気がした。
(聖奈ちゃん関係のことなのかな?)
そう思いながらも
いつも通りカメラで写真を撮っていると
黒尾くんがいた。
(今日もかっこいいな…)
カメラのシャッターを押そうとした時。
彼が誰かの頭を撫でているのが見えた。
(え…)
それは、聖奈ちゃんだった。
…確かに、最近"一緒に帰ろう"と誘っても
"用事あるから"と言われてしまう。
チラッと二人の方を見ると
衛輔くんもいて、楽しそうに話していた。
(あ〜、いいな)
写真だって、聖奈ちゃんが撮ってる方が
笑顔だし、あれが黒尾くんの自然体だったら
嫌だなと思ってしまった。
彼はじゃあねと言って、アリーナに行った。
私の中でたくさんの不安が募る。
もしかしたら…と、何回も思ってしまう。
好きなのに、彼が遠くにいる気がする。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。