第15話

ファンの子に会ったオフの日②
610
2020/04/27 15:42


あなたside

なんかぜーんぶにどうでもよくなって
フラフラ徘徊しよった。
まだ夕方なのに、平日だからなのか
妙に閑散としていたり、騒がしかったり…

私がジャニーズ事務所に入ってから
デビューに向かって一心に盲目的に
取り組んできてたからかな?

町って意外とたのしいなって。
いろんな人がおって
いろんな食べ物が売ってて
いろんな音がして…

私がアイドルに捧げた対価に
私はこんな世界を見ずに生きてたんだって

そう思ったら、この12年を
全部否定したくなった。

どうせうまくいかないし、
自分のファンなんていないし
他のファンは受け入れてくれないし


???「…あなたちゃんですか?!!!!」


誰かに呼ばれた…
女の子の知り合いなんておらんのに。

急に腕を捕まれ


???「…あなたちゃんですか?」


だれなんやろ
こんな可愛い子知り合いにおらんはずや


あなた「?」

ファン「ジャニーズWESTの
    佐久間あなたちゃんですよね?」


名前知ってるってことは、アンチやんな
ここまできたら、もう何言われようがええわ


あなた「…はい」


ファン「あの!わたし白色ジャス民で!!」


…おったんや…ファンやって


ファン「5年くらい前から担当で、
    いつか本物に会えたら手渡ししようって
    ずっとお守りみたいにお手紙持ってたんです!」


そう言ってカバンから年季の入った
ボロボロな封筒をくれた。


ファン「もう何年も前に書いたから
    ファンになってすぐに書いたから
    恥ずかしいこと書いてる気がするけど…
    絶対いつか読んでもらいたいって!」


こんだけボロボロになるって
毎日持っててくれて
その歳月だけ応援してくれてたってことやんな…


あなた「…ありがとう」


こんなわたしの「ありがとう」を聞いて
なんでそんなにも泣いてくれるん…?


ファン「…ほんとにあなたちゃんには助けられて…
    学校でいじめられて、しんどい時ほんと
    何回も少クラ見たり雑誌読んだり…
    生きててよかった…会ってお礼言えて」


この子なに言うてるん
こんな、いつでも死んでええわって
人生諦めてる私を見て生きててよかったって…


ファン「いまは、コンサート発表されて、嬉しくて
    絶対に行って、生で
    キラキラ踊るあなたちゃん見れるって
    思うだけで幸せなんです!
    だから、これからもずっとずっと
    私の憧れる素敵なあなたちゃんでいてください」


今までの私がこの子には
キラキラ踊ってる素敵な人間やったんや…

こんなにも救われる言葉がある?

気づいたら私は泣いてて、困らせてた…


あなた「…ごめんね…本当にこんな私で
   弱いわたしでごめん…」

ファン「違いますよ。あなたちゃんは
    見てる人を幸せにしてるんですよ?
    だから謝らないでください…」


2人して泣いてた…

お互いのことなんも知らんのに
どういう環境にいて
何に悩んでて…全く知らんのに
遠いところでお互いがお互いを支えてたんだって
そう思ったら、私は
あの7人以外にも、見えないところにいる誰かにも
支えられてたんだなって…


あなた「…本当にありがとう。
   あなたのおかげでもっと頑張れる気がしてきた。
   これからも私のこと好きでいて。」

ファン「あなたちゃんがアイドルやってる限り
    ずっと応援してます」


って、笑ってくれた。
ああ、私が見たかったのは
笑顔だったのかもな。

そのあと、また少しだけ話した。

まだ高校に入ったばかりだってこと
お小遣いをやりくりして公演に来てくれてたこと
小柄な彼女はたくさんわたしに
わたしの好きなところを教えてくれた。


ファン「わたしは今後、
    ドラマで活躍するあなたちゃんも見たいし
    かっこいい曲もかわいい曲も
    歌って踊るあなたちゃんも見たいし
    スカートとか履いた姿も絶対に可愛いと思うし
    いろんなあなたちゃんをずっと待ってます!」

あなた「ありがとう、ほんま。
   気をつけて帰りや」


って、見送った。

私の知らない私をたくさん教えてもらった。

たのしかった。嬉しかった。
こんな私を必要としてくれてる人がおって。

ファンがあの子1人だったとしても
私はあの子の為に頑張らんといかんなって。

だから、わたしも前を見て変わろう。

そして、とりあえず
淳太くんにごめんなさいを言おう…


    














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