第4話

☺︎
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2020/06/16 12:16

彼、道枝駿佑くんは、一つ下の部活の後輩だった。




軽音楽部の私と彼。

後輩とはいえ、道枝くんとは所属するバンドグループが違うので、時々挨拶を交わす程度の間柄だった。




可愛らしい顔。
軽く遊ばれた栗色の髪。
色白で、細くて、高身長。

おまけに、すれ違う時に香る甘い匂い。




道枝くんはバンドの中でギターを担当していて、姿がまた様になっていてかっこいいのだ。
去年の文化祭で彼のバンドの演奏を聞いた時、思わず見惚れてしまった。




顔面は最強で、ギターもできる。
そしていい匂い。


さぞかしモテるんだろうなぁ…と、あれに会うたびに他人事のように考える日々。





「道枝くんは彼女を作らない」なんて噂を耳にしたことは何度かある。

同時に「道枝くんは実は遊び人」なんて言う話も聞いたことはあるけれど、噂が本当かどうかを差し置いて、軽音楽部の女子たちは学年を問わず、“みんなの道枝くん”を徹底していた。





…まあ、本当だとしても私には関係ないけど。





って、他人事のように考える毎日だったからこそ、他人事ではなくなってしまったこの状況は夢なのだと信じたかったのだ。





道枝「ねぇせんぱい」

『っち、近いです道枝くん…っ』





ふわり、道枝くんの香りがした。

…いい匂いだなぁ。




このままでは鼻と鼻がくっついてしまいそう。

こんなに至近距離で私の平凡オブ平凡の顔面が見られていると思うと消えてしまいたくなる。






ああ、どうしてこんなことになったんだ。






思い返せば、私が音楽室に忘れ物なんてしたのがいけなかった。

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