無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第3話

夜の電話と爆弾と
(なまえ)
あなた
デート、って……
なにをどう準備すれば
いいのーー!?
 デート前日の夜。
 そわそわ浮き足立つ心を落ち着かせるために大きく深呼吸する。
(なまえ)
あなた
(先輩にかわいいと
 思ってもらえるには、
 どうすればいいんだろう)
 前日に慌てることじゃないってわかってるけど、いくら確認して何度大丈夫と唱えても、冷静になんてなれない。
(なまえ)
あなた
オフショルにフレアスカート……
はかわいすぎるかな……
(なまえ)
あなた
やっぱジャンパースカートで
大人っぽくしてみる?
(なまえ)
あなた
先輩と並ぶんだったらショーパンで
カジュアルにまとめるのも……
 こんな調子で、もう一時間はクローゼットとにらめっこしている。
(なまえ)
あなた
先輩は……
どういうのが好きなんだろう
「デート 服装」
 の検索結果が表示されたスマホを片手にうんうんうなっていると、ピロンとメッセージアプリからの受信音が鳴った。
 通知に表示されたそれは渡辺先輩からで。
(なまえ)
あなた
あわわわ……!
 思わずスマホを布団へ投げてしまった。
(なまえ)
あなた
はっ、いけない。
きっと明日の話、だよね……?
 枕元に埋まるスマホを拾い上げてメッセージの内容を確認する。
先輩
《今大丈夫? 電話していいかな》
(なまえ)
あなた
でっ、…………電話!?
 思いもしなかったお誘いにドギマギして、意味もなくきょろきょろあたりを見回してしまう。
 既読をつけてしまった以上返信しないわけにもいかない。
 震える手で《大丈夫です》の文字を打つ。
(なまえ)
あなた
送って、いいんだよね?
変なとこないよね?
 送信ボタンを押す手にぐっと力をこめて……。
(なまえ)
あなた
えいっ
 すぐに既読がついて、着信を知らせるようにスマホが震える。
(なまえ)
あなた
も、もしもし……
時雨
時雨
もしもし、あなたちゃん?
(なまえ)
あなた
は、はい!
えっと先輩……ですよね
 電話で先輩の声を聞くなんて初めてで、なんだか変な感じがする。
 それに、耳のすぐ傍から聞こえるのがくすぐったい。
(なまえ)
あなた
急に電話なんて
どうしたんですか……?
時雨
時雨
嫌?
(なまえ)
あなた
そういうんじゃないですけど
時雨
時雨
……ふふ、よかった。
あなたちゃんの声ききたくて
(なまえ)
あなた
 それって……!
時雨
時雨
恋人っぽいでしょ?
(なまえ)
あなた
ぁ……。そう、ですよね
 そういえば、と恋人手帳に書かれた「夜電話で話す」の文字を思い出す。
(なまえ)
あなた
(馬鹿だなぁ。
 ……真に受けちゃダメなんだって)
(なまえ)
あなた
(私と先輩は
 本当の恋人じゃないんだから)
 そんなこと、わかってるつもりなのに。
 スマホを耳につけたまま、ぽす、と布団に横になる。
(なまえ)
あなた
先輩は、わかったんですか?
恋のこと
時雨
時雨
まだ全然
(なまえ)
あなた
あはは……そうですよね
 それを聞いて、少しほっとしている自分がいる。
時雨
時雨
あなたちゃんは何してたの?
(なまえ)
あなた
えーっと、明日の準備を少し……
 部屋中にまき散らされた服やカバンから目を逸らす。
時雨
時雨
そっかそっか。えらい、えらい
(なまえ)
あなた
む、
さては子ども扱いしてますね?
時雨
時雨
まさか! 大事な彼女さんを
そんな扱いしませんよ
(なまえ)
あなた
っ、わざとらしい……
時雨
時雨
あはは! ごめんごめん
 絶対ごめんなんて思ってないな? もう。
 声しか聞こえないのに、今先輩がどんな顔して話しているのか目に浮かぶようだ。
 ドキドキはまだ収まらないけど、まるで放課後図書室で話している時みたいに、気楽な楽しさがある。
(なまえ)
あなた
そういえば先輩三年生ですよね?
(なまえ)
あなた
今さらですけど
遊ぶ約束なんてしちゃって
いいんですか?
時雨
時雨
あれ? あなたちゃんに
言ってなかったっけ。
俺推薦受かったんだよ
(なまえ)
あなた
え! 
すごい、おめでとうございます!
時雨
時雨
ふふーん
もっと褒めてもいいよ。
何も出ないけど
(なまえ)
あなた
じゃあ代わりに私が
パチパチするあめあげますね
時雨
時雨
えーほんと?
姫からのお祝い、
ありがたく頂戴致しましょう
(なまえ)
あなた
あははっ!
やっぱ文系ですか?
時雨
時雨
そうだよ。
司書さんになるために、
そのお勉強をするの
(なまえ)
あなた
(司書さんか……)
 図書館で働く渡辺先輩の姿を想像する。
 普段の言動はゆるかったり無神経だったりするけど、本に対しては真面目で誠実で、なにより本が大好きな人だもの。
 きっといい司書さんになるんだろうなぁ。ぴったりだ。
(なまえ)
あなた
先輩のそういう話、
初めて聞いた気がします
(なまえ)
あなた
でも想像してみるとこう……
しっくり来ますね
時雨
時雨
そう? だったらうれしいな
時雨
時雨
本を読むようになったのは
母が好きだったからだけど……
時雨
時雨
今みたいに好きになったのは
図書館で司書さんが色んな話を
してくれたからなんだ
(なまえ)
あなた
なんか……いいですね
そういうの
(なまえ)
あなた
私はこれといった
夢とか目標とかないので……
(なまえ)
あなた
どこか適当に進学して就職して
満員電車に揉まれるのかな~?
なんて、漠然と思ったり……
時雨
時雨
そうなの? 
でもさ、夢なんてほんとは
大層なものじゃないんだよ
(なまえ)
あなた
時雨
時雨
友達と一日中楽しく遊びたいとか、
美味しい物を食べたいとか……
時雨
時雨
そういう小さな夢を
少しずつ叶えていけばきっと、
将来やりたいことが見つかるよ
(なまえ)
あなた
小さな夢から……
時雨
時雨
大事なのは今より少しだけ、
周りに目を向けることかも
……なーんて言ってみたり
時雨
時雨
って、もうこんな時間か
(なまえ)
あなた
あ、ほんとですね
時雨
時雨
早く寝ないと
明日がしんどくなっちゃうね
時雨
時雨
あなたちゃんと話してると
楽しくて、つい話し込んじゃうな
(なまえ)
あなた
ふふ、私もです
 今夜はいつもよりずっと素直に言葉がこぼれてゆく。
 でもそれはぜんぜん嫌じゃなくて、むしろ心地いい感じだ。
時雨
時雨
電話してくれてありがとね
(なまえ)
あなた
こちらこそ、
ありがとうございました
時雨
時雨
あ、そうだ
(なまえ)
あなた
はい?
時雨
時雨
最初電話かけた時、
『恋人っぽいから』って言ったけど
あなたちゃんの声がききたいって
思ったのはほんとだよ
(なまえ)
あなた
ん……????
時雨
時雨
でも、……こうやって話すと、
なんだかドキドキしちゃうね
(なまえ)
あなた
え、せんぱい……っ?
 なにか……とんでもない爆弾を落とされた気がする。
時雨
時雨
ふふ、じゃあまたあしたね。
おやすみ
(なまえ)
あなた
お、おやすみなさい……
 途切れた電話口に小さくつぶやくのが精いっぱいで、頭が働かない。
 その後のことはよく覚えていない。
  明日の準備を終えて布団に入ってなお、ばくばくとうるさい心臓は先輩のせいだ。
 ——どうにも今夜は眠れそうにない。