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第2話

恋……って?
 好きな人からの告白に、心臓が痛いくらい脈打っている。
(なまえ)
あなた
付き合う、ってどういう……
 憧れの、ずっと片思いしていた先輩に告白されるなんて。
時雨
時雨
俺のね、
彼女になってほしいな~っていう
提案なんだけど
 先輩も私と同じ気持ちだって、思っても……いいのかな?
(なまえ)
あなた
わ、私もっ、先輩が——
時雨
時雨
俺ね、何度か自分なりに
考えてみたんだけど
そういうのよくわかんなくて
(なまえ)
あなた
え……?
(なまえ)
あなた
……えっと……
なにがですか?
 悪い予感がして、つぅ、と嫌な汗が背中を伝う。
時雨
時雨
恋愛的な〝好き〟とか
〝付き合う〟とか。
わからないんだ
(なまえ)
あなた
(どういうこと?)
 浮かんだ気持ちが翼をもがれたように落ちてゆく。
時雨
時雨
だから、あなたちゃんに
手伝ってほしい
時雨
時雨
恋愛的な〝好き〟が、
〝恋〟がなんなのか、
知る手伝いを
(なまえ)
あなた
それ、は……
つまり先輩は私のことが
好きとかじゃなくて……
(なまえ)
あなた
ただ恋人っぽいこと……
〝恋人ごっこ〟をしたい
ってことですか?
時雨
時雨
ん……言葉を選ばなければ、
そういうことに
なっちゃうのかな
(なまえ)
あなた
っ……
 さっきまでのふわふわとした気持ちは、一瞬で地の底に突き落とされてしまった。
 なのにバツが悪そうに眉を下げる先輩の目は、まるで迷子の子どものようで。
 どうしようもないほどに、憎みきれない。
(なまえ)
あなた
っ…………
時雨
時雨
やっぱダメ、だよね。
でもこんなわがまま頼めるの、
あなたちゃんしかいなくて
 人の気も知らないで、どうしてそんなこと言うの?
 ひとり舞い上がって、私の心もてあそんで、先輩の馬鹿。
 でも……、私しかいないって言われてどこか喜んでる私が一番——
(なまえ)
あなた
——馬鹿みたい
時雨
時雨
……そうだよね。
変なこと言ってごめんね。
忘れて?
(なまえ)
あなた
待って……!
 席を立った先輩が、また手の届かない場所に行ってしまうような気がして思わず声が出た。
(なまえ)
あなた
そうじゃなくて……
いいですよ。先輩が望むなら
 正直言ってしまえば、いいことなんて全然、何一つない。
 でも。
 先輩の告白は嘘でも、私の好きと先輩の好きが別物だったとしても、それでも。
 私じゃない誰かが先輩の傍にいることになるのなら。
 このふざけた〝恋人ごっこ〟の方がずっと、いい。
 それに、これはチャンスなのかもしれない。先輩に私のことを好きになってもらう、きっかけ。
 ……そうでも思わないと、ぐちゃぐちゃの心をさらしてしまいそうで。
(なまえ)
あなた
(だからお願い。
 これ以上遠くに、行かないで)
時雨
時雨
ほんとにいいの?
 どうしても「いい」と言葉にはできなくて、こく、と頷いた。
時雨
時雨
ありがとうあなたちゃん……!
これからよろしくね。
俺の、彼女さん
 ……せんぱいのばーか。


 ***

 恋人(仮)になって一週間。
 私なりに覚悟を決めたつもりだったのに、何が変わるということもないいつも通りの放課後を過ごしていた。
(なまえ)
あなた
えっと……恋人っぽいこと?
とか、しなくていいんですか?
 たしか、先輩は恋を……〝好き〟を知りたいんだったよね?
時雨
時雨
え? あ、そうだよね……!
時雨
時雨
でも、どうしよう。
なにをすればいいのか
わからなくて……
(なまえ)
あなた
……じゃあ手始めに
〝恋心〟について
考えてみましょう?
(なまえ)
あなた
幸いここは図書室ですから。
調べ物にはうってつけです!
時雨
時雨
……あなたちゃん
 足を本棚に向けたところで呼び止められる。
時雨
時雨
ありがとう
(なまえ)
あなた
っ……、はい
 無邪気なおひさまみたいな笑顔。
 あー、やっぱ好き……っ!


(なまえ)
あなた
ふむ……
 いくつかの本を読み比べて、わかったことをノート——恋人手帳——に書き出して眺める。
 ……ちなみにこの残念な名前は先輩が名付けた。
(なまえ)
あなた
えぇ……
先輩のネーミングセンスって……
時雨
時雨
あんま言わないで……。
こういうのは
識別できればいいんだから
 とのことだ。
(なまえ)
あなた
〝恋心〟と一口に言っても、
こう見ると結構色々ありますね
 劇的に落ちる恋、そばにいると安心する相手との恋、行き過ぎて歪んだ憎しみに近い恋まで。
 その種類は多岐にわたっている。
時雨
時雨
感情は一言で定義づけ
できるものじゃないからね。
答えが決まっていれば楽なのに
 それは恋人らしいことについても同様で、手を繋ぐやキスをするなどの肉体的な触れ合いだけでなく、口にすることで愛を確認し合うとか精神的なものもある。
 あとは名前を呼び合ったり、何気ないしぐさにドキッとしたり、普段と違う姿に惚れ直したり、寝る前の電話でささいな幸せを感じたりとか。
(なまえ)
あなた
これ全部に手を出すの、
相当大変ですよ
時雨
時雨
うーん。じゃあ、
まずはその恋愛小説を参考に
その内容を一通りやってみよう
 そう言って先輩が指さしたのは、私が持っていた文庫本だった。
 最近映画化されたお気に入りの一冊で、良い機会だからと読み直していたものだ。
 この本なら、主人公の心理描写が丁寧でわかりやすいし、王道展開なので、何か参考になるかもしれない。
(なまえ)
あなた
それ、いい考えだと思います!


 ***

(なまえ)
あなた
大体こんなものですかね。
この本に書かれているのは
時雨
時雨
そうだね
 ぺらり、先輩が本をめくる。
時雨
時雨
うーん、『彼のことが
気になって胸が苦しくて』……
時雨
時雨
あなたちゃんもこういう気持ち
感じたことあるの?
(なまえ)
あなた
えぇ?
そりゃ……あります、けど
時雨
時雨
そうなんだ。……ふーん
 ……なんでちょっと不機嫌そうなんだろう。
 わかりやすくまとめられたノートを改めて見返す。
「手を繋ぐ」
「贈り物をする」
「夜電話で話す」
「好きと言葉にして伝える」
 どれもこれも少女漫画によくある、一度は夢に見たようなシチュエーションばかり。
(なまえ)
あなた
(これを、先輩と……)
〝フリ〟だとわかっていても、既に緊張してしまう。
 ——キーンコーンカーンコーン。
 ちょうど、下校時間を告げるチャイムが鳴り響いた。
時雨
時雨
もう時間だね
(なまえ)
あなた
時間かかっちゃいましたから
 ほっとしたような、少し残念なような気持ちが残る。
時雨
時雨
うーん。まだ話し足りないなあ……
そうだ今度の日曜空いてる?
(なまえ)
あなた
? 空いてますよ
時雨
時雨
じゃあ実際にデート、
してみよっか
(なまえ)
あなた
で、デート!?
 机に置かれた恋人手帳には「一緒に出掛ける」の文字。
(なまえ)
あなた
(先輩と休日にデート……だなんて)
 浮ついた単語にまた頭がチカチカしてしまいそうだ。