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第4話

『王道☆トキメキ初デート!』?
 日曜。デート当日の朝。
 待ち合わせの駅に向かう電車の中で、私はただ開閉を繰り返す電車のドアをぼーっと眺めるしかできずにいた。
(なまえ)
あなた
(昨日は全然眠れなかった……)
 夜に先輩と電話したことを思い出すとふるっと体が震えて、緊張で冷たくなった指先をぎゅっと握りしめた。
  通り過ぎる駅の数に比例して、鼓動がどんどん速くなっていくのを感じる。
 デート服は昨晩散々悩んだ末に、透け感のあるレースのトップスにジャンパースカートという、大人っぽく、でもかわいらしさの残る恰好へと落ち着いた。
(なまえ)
あなた
駅、次だ。早すぎる……よね?
うぅ……
 待ち合わせ二十分前に着いちゃうなんて、はしゃいでいるみたいで恥ずかしい。
 ……間違いでは、ないのだけど。
(なまえ)
あなた
(先輩だって
 まだまだ来ないはずだし……)
 むしろ、のんびりマイペースな先輩のことだ。多少の遅刻だって十分あり得る。
(なまえ)
あなた
ネガティブだめだめ!
今日はデートなんだから……!
(なまえ)
あなた
その分心の準備を
しておけばいいよね。よしっ……
 そんなことを考えて向かった待ち合わせ場所には、私服姿の先輩が。
(なまえ)
あなた
(先輩もう来てるなんて
 聞いてないんだけど……!)
 スマホを見るけど、連絡は来てない。
(なまえ)
あなた
(それに先輩私服だ~~!?
 いや、そりゃ、休日なんだから
 当然なんだけど……!!!)
 白のTシャツにオープンカラーのシャツを羽織った、シンプルカジュアルながらもこなれた様子の伺える服装だ。
(なまえ)
あなた
(あぁどうしようかっこいいよ……)
 普段見ている制服姿よりも数段大人っぽいその佇まいに頭がくらくらする。
 心が落ち着かないまま二の足を踏んでいると、ふと目が合ってしまった。
 先輩がこちらへ駆け寄って来る。
 休日で人も多いのに、その中からすぐに見つけてもらえたことが……なんだかとてもうれしい。
時雨
時雨
おはよう、あなたちゃん
(なまえ)
あなた
お、おはようございます……
時雨
時雨
っ……
(なまえ)
あなた
えっと、先輩……?
時雨
時雨
あっ、ごめん。
……とってもかわいくて。
俺のためにおしゃれしてくれた?
(なまえ)
あなた
なっ……
 カッと顔が熱くなったのがわかる。そういうことをためらいもなく言えてしまうところ、本当にたちが悪い。
(なまえ)
あなた
デート、なので……。一応……
 恋人ごっこの一環だとしても、少しでも先輩にかわいいって思ってもらいたくて。なんて口が裂けても言えない。
時雨
時雨
ふふ、うれしい。
じゃあ、行こうか
 くすっとやわらかく笑んだ先輩の、やさしい光を灯した瞳が眩しい。
 こちらを振り向いた先輩の隣に並ぶと、私の歩幅に合わせて歩いてくれる。


時雨
時雨
今日は映画に行くんだよね
(なまえ)
あなた
はい! その後カフェに行って、
食べ歩きしたり
ショッピングしたりする予定です
(なまえ)
あなた
今日のために、映画が絶賛公開中の
あの小説を参考にした
『王道☆ときめき初デートコース』
を組んできました!
 じゃーん、とスマホの画面を見せる。
(なまえ)
あなた
なので任せてください!
 なんて。本当は恋人ごっこの参考にしようと話していた、例のお気に入りの恋愛小説を読んでいたら興が乗ってまとめただけなんだけど……。
時雨
時雨
それは頼もしいな
 最初の目的地へ向かいながら、おしゃべりをする。
(なまえ)
あなた
(あ……)
 話しながらでも、さりげなく車道側を歩いてくれる先輩の気遣いに胸がきゅっと鳴った。
(なまえ)
あなた
先輩ってさらっと
そういうことしますよね
時雨
時雨
うん? あぁ。兄貴にね
〝女の子のことはお前がちゃーんと
エスコートしてやるんだぞ〟
って色々言われて……
(なまえ)
あなた
へぇ……
時雨
時雨
……それに
(なまえ)
あなた
時雨
時雨
今日のこと楽しみにしてたから。
あなたちゃんにも
楽しんでもらえるとうれしいな
(なまえ)
あなた
っ……!
 微笑んだ先輩の顔を見れない。
 いつもの百倍かっこよく見えて、……ドキドキする。
(なまえ)
あなた
…………。
……せんぱい、って
お兄さんいるんですね
時雨
時雨
意外?
(なまえ)
あなた
いえ、むしろ……納得?
時雨
時雨
えー
(なまえ)
あなた
末っ子っぽいですもん
時雨
時雨
そうかなぁ……?


 ***

 映画館に掲示されている上映スケジュールを前に頭を悩ませる。
(なまえ)
あなた
先輩は何が見たいですか?
 私的には、やっぱりあの恋愛小説を原作にした映画がいいけど。
(なまえ)
あなた
(恋愛映画は男の人、
 つまらないって言うからな……)
時雨
時雨
あなたちゃん
(なまえ)
あなた
はい?
時雨
時雨
手、出して
(なまえ)
あなた
……?
時雨
時雨
はい、これ。映画のチケット
 そう言って手渡されたのは、今まさに考えていたお気に入りの小説を原作にした恋愛映画のチケットだった。
(なまえ)
あなた
先輩これ……!
時雨
時雨
この映画、あなたちゃんが
好きな本のでしょ?
時雨
時雨
気になってたみたいだから、
喜んでくれるかな~って
予約したんだけど……
もしかしてもう、観てた?
 ふるふると首を振る。
(なまえ)
あなた
ちょうど観たいなって
思ってたんです……!
(なまえ)
あなた
(どうしよう、すごくうれしい……)
 私のことを考えてくれたのかと思うと、また好きで心がいっぱいになる。
(なまえ)
あなた
あ、でも先輩は
つまらないかも……
時雨
時雨
そんなことないよ。
だってあなたちゃんイチオシの
お話なんでしょ?
時雨
時雨
それに勉強にもなるかもだから。
……ね?
(なまえ)
あなた
……はい
 気を、遣わせてしまったなぁ。
 先輩は人の感情に疎くて無神経なとこもあるけど、まったく気遣いができないわけじゃない。
 先輩は……どうして恋心を知りたいんだろう?
時雨
時雨
そっか、言ってなかったっけ
 問いかけてみたら思いの外からっとした声が返ってきた。
(なまえ)
あなた
そうですね
 承諾した今も、実を言えば〝恋人ごっこ〟なんて、普通じゃない、めちゃくちゃな関係だと思っている。
時雨
時雨
俺のわがままに
付き合ってもらうんだもん。
あなたちゃんにはちゃんと
話しておかなきゃ、だよね
(なまえ)
あなた
……
時雨
時雨
俺さぁ、みんながどうして
そんなにまっすぐ〝好き〟って
言えるのかわからないんだ
時雨
時雨
あなたちゃん風に言えば……
にぶちんゆるゆる野郎、でしょ?
(なまえ)
あなた
えーっと……まあ、そうですね
 そんなことを図書室で言った気がする。
時雨
時雨
俺って
『人の心がわからない』んだって。
だから俺の好きな人たちにも
嫌われるって
時雨
時雨
……そう言われちゃったんだよね。
でも、例えばあなたちゃんに
嫌われちゃったとしたら……
悲しいでしょ?
(なまえ)
あなた
(でしょ?って、そんな)
 そういう意味じゃないってわかってるけど、胸が苦しくなる。
時雨
時雨
だから知りたいんだ。
〝好き〟のこと。
人の気持ちのこと
 切実な瞳がすがるように訴えかけてくる。
(なまえ)
あなた
(……あぁ、そっか)
 先輩なりに、考えて、苦しんだ末に告白してくれたことだったのかな。
(なまえ)
あなた
そうだったんですね。
……わかりました
(なまえ)
あなた
私、先輩に〝好き〟を……
恋を知ってもらうために
がんばります……!
時雨
時雨
ふふ、うん……ありがとう
 全部が全部理解できるわけじゃないけど、そこは同じ人間じゃないんだから。
 それよりも今は……少しでも先輩の力になりたい。