第9話

episode1
5,657
2022/08/08 11:00









北斗「…じゅーり、」



樹「…」



北斗「そろそろ樹あたるよ…」



樹「…ほくと、答え…」



北斗「やーだ、」



樹「…ゴンッッ」








生ぬるい風が窓から入る昼下がりの教室




数学の授業




抑揚のない先生の声





13:50




眠い時間帯




いくつかの頭が舟をこぎ




またいくつかの頭が机に突っ伏し




他の頭は黒板とノートを行き来するためにせわしなく動く











隣で気持ちよさそうに眠る樹も机に突っ伏した一人




せっかく起こしたのにまたすやすやと眠り始める




今日は朝来れたからそっとしておこうかな、なんて思った矢先








「田中~、この問題いけるか~」









ほら言わんこっちゃない




わき腹をシャーペンでつんとつつく。




びくっと体を震わせてゆっくりと頭を上げる。




ちょっと下を向いて何度か瞬きを繰り返す




ここまでが樹の一連の流れ




ぎゅーっと目を凝らして黒板を見つめる。




先生はそれを焦らせることなく前に座る生徒と雑談している。










樹「…ほくとわかんない、」




北斗「この公式に代入して解くの、」




樹「んん…」












まっさらなノートに公式を書いて数を代入していく樹をじっと見つめる。




ちょっとしわが寄った眉間が寝起きだからか時々ぴくっと震える。




俺のノートを覗き込むから見えやすいように斜めにしてあげると




んへ、ありがと




なんて声が聞こえた










樹「5ⅹ+2Y」





「おー、あってんじゃん、田中やるなぁ」










先生、俺だってすごいもん。




俺が樹に答え教えてあげたもん




ってちょっと思ってると









「松村ナイスアドバイス」









って先生が親指をぴんっと上にあげた。




隣の樹を見ると頭を机につけながらピースしてやったな、なんて言ってくる




俺はちょっと気恥ずかしくなってぺこっと頭を下げて樹のピースにグーを出して










北斗「俺の勝ちぃ」








って言ってやった。

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