それはある日、突然に始まった。
ごめんなー!と言いながら小走りで教室を出ていく遊を自分の席から見送る。
美玖って理系の子だよね……確か結構可愛い子。でもあの子彼氏持ちだし、まぁいいか。
ということが、毎日続いた。
遊と別れ、放課後、私はなちと一緒にワクドナルドにいた。
テーブルに頬杖をついてなんとなく私がぼやくと、向かいに座るなちは割り勘で買ったポテトをつまみ、口へ運びながら言った。
察しがついたような声と表情でなちが言う。
なんだか勘違いされている気がするので、一応なちに説明しておいた。
美玖ちゃんに嫉妬とかあるわけない。あっちは彼氏持ちで遊は私の彼氏だぞ。
なちがため息をついて口を開いた。
私はようやくポテトを一本食べた。
まだ温かかったけれど、もう揚げたての熱さではなくなっていた。
……遊の私を好きな気持ちも、このポテトみたいに冷めちゃったのかな……。
なちの呟きは聞こえていたけれどスルーした。
嫉妬じゃない。だいたい私がひとりで気にしたって何も変わらないんだから、考えるだけ無駄。思うだけ無駄なの。
――……頭では、嫌になるくらい、分かってるのに。
大声で言って、勢いのままテーブルに突っ伏す。
しばらく起き上がれなくて、突っ伏した状態でなちと別の雑談を始めたけれど、なちは注意も文句もなしに付き合ってくれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。