しかし、日付は11/9のままだった。
学校に行く準備をしながら私は、なぜいつもの「昨日」とは、携帯電話の置き方が違っているかを考えていた。
風が吹いて倒れたり、お母さんかお父さんが、机の上に置いたと言うのならば、「昨日」もそうなっていなければおかしいはず。
その小さな違和感を抱いたまま、私は家を出た。
そう言い、玄関のドアを開けると…。
優太が退屈そうに家の前に立っていたのだ。
私がたずねると少し照れたような表情を浮かべて、軽く手をあげる。
優太は…私のことを心配して迎えにきてくれたんだ。
そう考えたら、少しうれしくなった。
自分でも何を言っているかわからなかったけど、優太に笑顔を向けてそう言った。
毎日「昨日」を繰り返していても、いつも違う「昨日」がある。
携帯電話の違和感はそういったものなのだろうか?
その答えを出せないまま、私は優太と一緒に学校へと向かった。
二人で並んでしばらく歩いていると…。
「昨日」と同じ場所で、廉が私に声をかけてきた。
振り返ってその表情を見ると、あからさまに優太を敬遠している事がわかる。
笑顔で廉に挨拶をするけどその廉は優太をジロジロと睨むように見ていた。
照れたように廉から顔をそらす優太。
そう言いながら一緒に歩き出す廉。
良かった……思えば、廉と優太は意見が食い違っただけで、喧嘩をしたわけじゃない。
それに、昨夜の海人のこともある…。
私たち4人ではどうにもならない事だってあるのだから、廉と優太の関係が良くなるのは私たちにとってとてもいい事だ。
私の死が無駄にならなかった。
いや…。それよりも体育館の中にカラダがあってよかった。
そうだ、このことは皆に教えなければならない。
放送室には誰かがいて…そこに入ろうとすれば「赤い人」を背後に呼び寄せられてしまうことを___。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。