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プルルルルと携帯が鳴りはじめました。
着信画面を見ると、あずさからです。
海斗は驚きます。
彼女から電話がかかってきたのは、あずさが記憶を失ってから初めてのことでした。
ドキドキと心臓を強く打ち付けながら、電話に出ました。
「もしもし、あずさ?」
あずさは言いづらそうに、それでもはっきりとした口調で言いました。
「さっきはひどいことを言ってごめんなさい」
少し前、あずさは自宅に帰り着いて後悔しました。
たしかに、記憶を取り戻してほしいという彼の想いが負担に思うこともあります。
けれど、それ以上に彼の優しさを感じていました。
だからこそ、あずさは謝ろうと思い電話したのです。
諦めようとしていた海斗にとって彼女からの電話は、何よりも嬉しいことでした。
海斗は、無理に彼女の記憶を思い出させることを止めようと思いました。
「あずさ、恋人から友だちの関係に戻ろう」
「でも……」
「そっちのほうがきっといいと思うんだ」
それが他でもないあずさのためであると思ったのです。
「うん。……わかった」
彼女もそれを受け入れました。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!