第45話

30   ありがとう__ごめんね
1,481
2020/09/16 14:46
廊下を歩く彼の背中を見つめる



あぁ  私今まで彼の何を怖がっていたんだろう



私に謝罪をするためだけにわざわざ宮城にまできてくれて

それを彼は聞くだけで良いと言ってくれた。

それなのに私は許すとも、大丈夫とも言えなかった。

それがどれだけ彼に辛さを与えたのだろうか
どれだけ苦しかったのだろうか、



全部我慢して、笑って出ていくその背中は震えて今にも消えそうなくらいに小さかった。


怖いのは私じゃなくて黒尾の方だよね…
泣きたくても泣けないんだよね。
ごめんね、私が弱かったから、黒尾を傷つけた
あなた
あなた
黒尾ッ…待って!
咄嗟に目の前の彼を大声で呼んだ
黒尾
黒尾
?…どうした?
あなた
あなた
私…全部思い出した。ちゃんと、全部
黒尾
黒尾
え?…え!
あなた
あなた
黒尾のこともみんなのことも、入院してる時にみんなが来てくれたこともちゃんと分かるよ
それに、私が思い出した一番大切なことは_____
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黒尾side

『黒尾ッ…待って!』

今日謝って、許すと言われても言われなくても、もう二度と会わない、いや 会えないだろうと考えていた

なのに  呼ぶ声に振り返ると泣きそうなら顔で俺を見つめている
黒尾
黒尾
?…どうした?
あなた
あなた
私…全部思い出した。ちゃんと全部
黒尾
黒尾
え?…え!
思い出した…?全部…良かった…っ

あぁでも思い出したからって俺がした事は変わんねぇしな…

あなた
あなた
黒尾のこともみんなのことも、入院してる時にみんなが来てくれたこともちゃんと分かるよ
黒尾
黒尾
そっ…か、良かった
あなた
あなた
それに…ね、今言うのは変かも知れないけどもう一つ思い出したことがあるの
黒尾
黒尾
あなた
あなた
私、黒尾のことが  好き
…………
黒尾
黒尾
え?
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あなたside
私が黒尾のことが好きだってこと。
あなた
あなた
来ないでとか話したくないとか…たくさん傷付けるようなこと言ってるし、きっと黒尾は私のこと好きじゃないと思うけど……思い出したの
背が高くて、バレーが上手くて、気遣いが上手ずで、一緒にいると楽しくて笑顔になれて、人をおちょくるのが上手くて、誰よりもチーム想いで、音駒の主将で、かっこいい。
そんな彼が大好きだ。
黒尾
黒尾
あなた、俺さっき俺があなたにしたことを許せとは言わないから謝罪だけを受け取ってくれって言ったけどあれ嘘だ
あなた
あなた
え?
黒尾
黒尾
俺もお前のこと好きだ、だからあなたの側で今までのこと償わせて欲しい。
彼は真剣にしっかりと私の目を見据えて、そう伝えてくれた。


やっぱり、私の好きな、大好きな彼はかっこいい。
答えなきゃ、彼の伝えてくれた言葉に
あなた
あなた
償いじゃなくて、2人で一緒に頑張らせて欲しいな、黒尾
黒尾
黒尾
え、じゃぁ…
あなた
あなた
こんなわたしで良ければ、よろしくお願いします。
嬉しさと、忘れてしまっていた悔しさと、彼への感謝と謝罪の気持ちが入り混じった涙を浮かべながら私は笑顔でそう答えた。

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