第42話

理由なんてない
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2022/07/18 12:00
田中「恵介さん、なんで……、」


山田「ち、違うんだよ!そ、そうだ。そうだ、またコイツ、どうしても烏野に戻りたいからって俺の事誘ってきて、それで……!」


縁下「いい加減にしてください!!」


あなた「っ、」








力の荒げた声が、室内に響いた。




田中くん達だけじゃない。





ほとんど皆が、この場に来ていて。






どうしてここが分かったのかとか、気になることはそりゃあるけど。










縁下「あなたは、そんな事する奴じゃない。」










ずっと…………信じていてくれたんだ。




それが分かって、なんだかとても、気持ちが緩んで。










山田「お前も、騙されてるんだよ!!!思わせぶりな態度ばっか取って、最後には男をゴミのように捨てるような________、ッぐぁ、!」


あなた「!!」










焦ったような口調の山田先輩。




それを制したのは、黒尾先輩だった。






横顔で分かる、紛れもない"怒り"の色。







どうして……こんなに怒ってくれているのか、私には分からない。











黒尾「_______本当は、心底楽しそうに笑うんだ。」


あなた「……、」


黒尾「お前その行いが!コイツの……花野井あなたの笑顔を奪ったんだよ!!当たり前みてぇに迎えるはずだった2年の4月を、こんな……こんな苦しい顔で迎えさせたんだよお前が!!」


あなた「________〜ッ、」











こんなに、声が掠れるほどに荒げて。





山田先輩に向けているその言葉は……どこか、私に"1人じゃないよ"と訴えかけているかのように聞こえてきた。











西谷「嘘……ッスよね、恵介さんが、そんな________、」


山田「…………ははっ、」










黒尾先輩の手を払って、薄笑いを浮かべて。




私を見た。








山田「お前が烏野で1人になれば、もう俺しか頼りはいなくなる。なのに、あっさり逃げやがって。」


あなた「………………、」


山田「お前を疎ましく思ってたルナのおかげで順調だったのになぁ、全部がパーだよ。」










ヒラヒラっと遊ばせたその両手で作った拳が、大きな音を立てて床に殴り付けられる。




ビクッと震えた私の肩に、孤爪くんの手が触れた。











孤爪「…………………ごめん、」


あなた「________ぇ、?」









何故か小さく謝られて、その真意を探る前に、その場に立った。




手に持つスマホを操作する。











〈________お前を疎ましく思ってたルナのおかげで順調だったのになぁ、全部がパーだよ。〉










山田「……なんのつもりだよ。」


孤爪「見たら分かると思うけど、花野井さんを襲おうとしていた時の写真もここにある。学校に渡そうと思う。」


山田「________は、」











目を見開いた山田先輩の方を、もう孤爪くんは見なかった。




代わりにまた、私の側に屈んで。










孤爪「ごめん。花野井さんがいくらこの人のバスケを応援したくても、マネージャーだったとしても、このデータは絶対に渡す。」


あなた「________、」


孤爪「そのくらい許せない。退学にでもなんでもなればいい。」











普段、面倒という感情以外あまり表に出さない孤爪くんが。



さっきの黒尾先輩みたいに、鋭く怒っているような表情を見せていて。









あなた「なんで…………そこまで、怒ってくれるの?」


孤爪「……、」











私なんかのために、そこまでしてくれる理由が分からない。



私の話を信じてくれて、助けにまで来てくれて。







私は、何を返せば良いのだろう。









孤爪くんは少し考えて、スマホをポケットにしまって。










孤爪「_______別に、理由なんかない。」















"当然のこと"とでも言いたげに、いつものおとなしい顔に戻っていた。

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