第77話

初恋の人
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2023/12/17 12:00
中学生の頃。







小学校と違って、男女の隔たりや異性というものを皆が意識し始めて、少し居心地の悪さを感じ始める頃。









同性の友達は勿論、仲の良い異性や自分をそういう意味で「好きだ」と言ってくれる異性も、少なからずいた。





私にとって同級生は、皆トモダチだった。






活発な子、皆から好かれる人気者、真面目な勉強っ子、特別教室に通うADHDの子、無口で大人しい子、何故かいつも片腕に包帯を巻いて眼帯をしている不思議な子、体のおっきい子、ちっちゃい子、車椅子に乗った子、ピアスを開けた子、机の中でダンゴムシを飼っている子。






多種多様な一人一人と関わり、言葉を交わし、関係をもつのが楽しかった。





自分の世界がグッと広がる感じ。




 


"分け隔てない"って、よく言われたんだけど……今思えばだた、好奇心が人一倍旺盛だったんだと思う。







誰にでもすぐに話しかけに行って、誰かの"トモダチ"になるのが楽しかった。








トモダチは、多ければ多いほどいいんだって、だって100人作る歌なんてあるくらいなんだもん。






そう、思ってた。










クラスで特別仲良くしていた女友達に誘われて、バレー部の練習を覗きに行ったのも、ただの好奇心。







ひとつ上の先輩で、及川って人がイケメンで人気だって教えてもらった。







ふーん、って思った。










イケメンだと人は人気者になるのか。






え、イケメンなだけで?







まあ、"だけ"では無かったんだけど。







ただ、私が連れて行かれたその練習風景の中で、一番カッコいいのが及川先輩だって言われて、あ、あの人か、って。







真剣な眼差しと、ボールを打つ力強い腕。







"男の人"って感じで、同級生のまだ幼な気の残るトモダチとは、何処か違っていた。










1つだけ、歳が違うだけで。








こんなにキラキラ輝いて見えるものなのか。










『ねっ、カッコいいでしょ!?及川先輩はねぇ、すっごい人気者なの!』


あなた『……うん、カッコいい!男の中の男ってかんじ!』


『ん……?うん、まぁでも綺麗な顔!って感じだよね!どっちかっていうと!』


あなた『綺麗……?……うん、整ってる!!いかつい目もカッコいい!』


『え、なんか違う。』


あなた『え?』












「あの人だよ??」と指さされて、その方向は、私が見ていた及川先輩とは別の人物を指差していた。






男らしい彼ばかりを追っていて、他の人物はボヤーっとしていた私の目がハッキリと本物の及川先輩を捉えた時、「んん、、?」と思った。









確かに、言われた通り美形……だと思う。






言われてみれば他の女子生徒の視線も、全部彼に一直線。








なのに________













『もう一本!!!!』


あなた『〜、』











力強く太い声が館内に響いて、私の意識は簡単に彼にもぎ取られていった。














及川『岩ちゃんナイスキー!!』


あなた『岩……ちゃん、先輩、』

















一番、カッコよかった。









練習が終わって、私たちも体育館から追い出されて。





帰る前にトイレにと校舎に駆けて行った友達の荷物を抱えて校門横に立ち、岩ちゃん先輩を思い浮かべていた。









名前……なんて言うんだろう。




2年生なのかな、誰か同じ小学校の人居るのかな。












及川『も〜岩ちゃん待って!』


『早くしろ!!肉まん取られっぞ!』


あなた『!』











耳にこびりついて離れなかったあの声が聞こえて振り向くと、さっき騒がれていた及川先輩と、その前には岩ちゃん先輩。





心臓が跳ね上がったのを覚えている。










後ろを走る及川先輩の方を振り向いていた彼は、カバンから財布を取り出しながら前を向き直し、










あなた『、!』


『ぉわ、!』











校門のすぐ側に立っていた私とぶつかった。













『悪ぃ!』


あなた『っあ、いや…………あ、コレ!』


『うわ、マジか!』












財布からこぼれ落ちた学生証を拾い上げて手渡すと、焦った顔で受け取り、そしてその男らしい顔をフッと緩めた。













『サンキューなッ!』


あなた『〜ッ、』















白い歯をニカッと出して笑ったその顔は、さっきの練習中の真剣な顔とは打って変わって幼なさを残していて。










あ、好き。












案外すぐ、コレが初恋だって気が付いた。

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