第74話

嫌いな人
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2023/12/07 12:00
あなた「ちん……、」


岩泉「"珍道中"。高校入ってからずっとハマってんだ、ここ。」









黄色い屋根に赤い文字で書かれた店名。




中からはガヤガヤ賑わいの声が聞こえてきて、地元民から愛されているんだと伝わってくる。









岩泉「おすすめは醤油。」


あなた「じゃあ醤油でっ。」











お店に入る前からオーダーを決めてしまい、暖簾をくぐって中に入った。










「らっしゃい!おー!!いつもあんがとな!」


岩泉「おーおっちゃん、醤油2つ頼むわ。どっちも大盛り!」


「あいよ!!もう先に皆座ってるぜ!」


岩泉「ん?」


あなた「「皆」……?」












店長さんらしき人は、爽やかな笑顔で私たちに笑いかけ、お店の奥の方の座敷に声をかける。














「おーい!連れが来たぞ!」


岩泉「んぉいおいおいおい待て待て!違うぞおっちゃん!てかアイツらいんのかよ!」












柄にもなく焦った様子の岩泉先輩。




"アイツら"……?














?「なになにー?今日別に連れとか居な________あれぇ岩ちゃん!」


?「おい岩泉、お前今日ゲーセンパスって言っただろーが!」


?「結局ラーメンには抗えないんでしょ________って、女の子連れ?珍しすぎない?」


?「はぁ!?岩ちゃんに女の子!?なんの冗談________、」


岩泉「あ"っ、ヤベぇ隠れろ!」


あなた「んぇ、」













奥から3人、ジャージ姿の男の人が出てきて、身が縮んだ。







しっ、知らない男の人……デカい……いかつい……無理、











________って、











?「________〜ッ花野井チャン!!!?」


あなた「…………げぇ……、」













思わず漏れた声に、自身で驚いた。






この人への嫌悪感は元来のものだ。








これを超すものなどない。


















及川________徹、






















及川「ちょっと!!?何でいんの!!?」

























「なんだ、連れじゃねぇの?でもすまんな、席空いてねぇから勘弁してくれよ!」











店長さんがテヘヘと笑い、私と岩泉先輩を有無を言わさず座敷へと押しやる。




いやいやいやいやいや、流石にこれは_____













岩泉「あなた、コイツら居てもいいか?悪い奴らじゃないから……。」













岩泉先輩に、烏野での事を言っておくべきだった。





ここで説明するのも無理があるし、何より申し訳なさが勝ってしまう。











あなた「……この人の隣と正面でなければ大丈夫です、」


及川「俺の事!!!?」


?「ぶはっ、及川お前なんでそんな嫌われてんだ!」












桃色の髪の人が及川徹を端に追いやって座り、おっとりした顔の黒髪の人は及川徹の正面に座った。







その隣に岩泉先輩が座り、私はその隣の通路側へ。









よし、斜めで極力視界に入れないで済む。











岩泉「お前ら注文は?」


?「今来たところだからこれからだよ。ご夫妻は?」


岩泉「アホか、そんなんじゃねぇよ。俺らはもう頼んでる。」










ご夫妻……。











岩泉「すまんな。この変なやつが花巻。」


花巻「花巻貴大でーす。俺も及川嫌いだから仲良くしようね〜。」


及川「ちょっと初耳!」


岩泉「で、こっちの色気野郎が松川一静。お前なら大丈夫だろうけどコロッと行くなよ。」


松川「俺のイメージ悪くなっちゃう。」










お2人に頭を下げて、自己紹介。







まさかこんな展開になるなんて……。






まぁ、幸い隣は岩泉先輩だし。








ラーメン食べたらさっさと出よう。















3人が注文を終え、ラーメンを待つ。













及川「で、何々、なんで花野井チャンがここにいんの!?飛雄嘘吐いてたの、?」


岩泉「帰省してきてんだと。」


花巻「なに、話が見えないんだけど。2人ってなんの知り合いなの?」


岩泉「中学が________と、すまん親だ。」













ポケットからバイブレーションの鳴るスマホを取り出すと、先輩は通路に出て外へ出ていってしまった。






1人取り残され、居心地の悪い視線を向けられる。














花巻「花野井さん、岩泉とどんな関係っ?」


あなた「……、」












楽しそうに笑い、頬杖をついてこちらを見る。






目線が交わり、途端に心臓がキュッと縮まった。










ダメだ……怖いなんて、思っちゃダメなのに。






震えそうななる唇をキュッと噛み締めて、気を紛らわすために手の甲を思いっきり反対の手でつねりあげる。








あなた「〜、ぁ、」


及川「違うって!花野井チャンは俺と中学の頃いい感じで________、」


松川「え、及川と?男見る目ないんじゃない?」


あなた「……誰ですか貴方。」


及川「ちょっと!!相変わらずだねその反応!」 











悔しそうに涙目になりつつも、ふんっと胸を張る。





この人、メンタル弱そうで強いんだよな。












及川「花野井チャンと俺の関係、知りたい!?知りたい!?」


花巻「で、どんな因縁があんの?花野井さん。」


あなた「……ぃぇ、私この人知らないです。」


花巻「ぶっははは!!!」


















声が震えていないか、慎重に言葉を発していく。








何故か、及川徹を貶す言葉ならすんなりと出るのに。










松川「相当嫌われてんな……何があったんだよ。」


及川「聞いて驚くなっ!花野井チャンはね、俺の"追っかけ"だったのさ!!」





































……私、本当にこの人嫌いだ。

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