第81話

憎悪の色
3,409
2024/02/12 12:00
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°





もう、大丈夫だと思っていた。





だけど確かに、私の中にはまだ、男の人への不信感と恐怖心が渦巻いていて。










その、理由。










烏野に入学し、バスケ部のマネージャーになり。










私の身に起こった事、そして音駒に入り、過去との清算をつけた事。






それでも尚、今も確かに怖いと、思ってしまっている事。











全てを話した。









2人は終始、度々口を出したそうにしていたけれど。








ひとまず最後まで、私の話を黙って聞いてくれた。
















あなた「________だから、」














先程の反応の理由を語り、そして震える声を出すのをやめた。









黙り込む2人の空気が重くて、私は落とした視線をまた上げることができないでいた。

















及川「___________ソイツ、」


あなた「…………、?」

















だけど、及川徹があまりに低く、いつものおちゃらけた顔からは予想もできないようなトーンで言葉を発するものだから。








思わず頭を上げた。











あなた「〜ッ、」


及川「名前何、どこ中?」


あなた「、ぇ…………。」


岩泉「烏野のバスケ部3年だろ。乗り込んだ方が早い。」


あなた「ぇ、乗り込む…………って、」











普段から顰めっ面の岩泉先輩はともかく。






及川徹のこんな……こんな憎悪に満ちた顔、見たことがなくて。














及川「何発かやんないと気が済まないよ。誰に手出してくれちゃってんの。」


岩泉「……あなた、お前それずっと______、」


あなた「…………〜、」










我慢していたのに。





話しの途中、ずっと堪えていた涙が、一筋溢れた。











だって……2人があまりにも、真剣に怒ってくれた。






私なんかの為に、こんなふうに感情を表に出して、怒って。








味方になってくれる人は、ここにもいたのに。









私はどうしてあの時、1人抱え込み苦しんでいたんだろう。






この世の全てが敵であるかのように思えて、もう全部どうでもいいって投げ出したくなって。









私にはこんなにも、頼もしい先輩と厄介な男がいたのに。














あなた「うぅ…………、ッ、」


岩泉「な……泣くなって、こ、これどうしたらいいんだ!?」


及川「岩ちゃん落ち着いて!!女の子はこういう時、俺みたいなナイスイケメンが優しく抱きしめてあげたら大体泣き止む!」


あなた「ッぁ…………それは本当に要らないです、」


及川「ちょっと今くらいいいじゃん!?」











いつも通りの及川徹だ。










スッと伸ばしてきた両腕を避けると、ショックを受けたような顔で地団駄を踏む。









正直ほんとに嫌いだけど……でも。













少し、感謝した。


























岩泉「落ち着いたか、?」


あなた「はい。」















2人に全てを話して、結果的には良かったと思う。







だけどきっと、私が話そうと思えたのは…………。














岩泉「……今の学校では、大丈夫なのか?」


及川「青城に来たっていいんだよ。俺たちがいるから。」


あなた「ううん…………音駒で、ある人たちに出会って……だからこそ、変われたから。」














怖がってばかりで、話にもならなくて、






たくさん失礼なことをして、なのにいつも、庇ってくれて、ちゃんと話を聞いてくれて、信じてくれた。










今の私がいるのは、きっとそのおかげ。









だから宮城に帰りたいとは、あまり考えていない。










それに、










あなた「帰るなら青城には行かないです。また中学の二の舞になる。」


岩泉「及川のせいだな。」


及川「人気者でごめん……。」













しょぼんと肩を落とした及川徹に、思わず笑ってしまった。





そんな私を見て、岩泉先輩は安心したように息を吐いた。












岩泉「どんな形でも……お前が今を楽しいって思ってんならいい。話してくれて、ありがとな。」


あなた「……先輩、」














忘れてはならない。







どんなに辛いことがあっても、乗り越えられないって思うような出来事があっても。










それでもずっと、私を信じ味方でいてくれる人がいる。







私の為に、怒ってくれる人がいる。










それだけでなんだか、すごく……強くなれるような気がする。











強い私で、居られる気がする。











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