第44話

もう、元通り
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2022/08/29 12:00
澤村「まぁ色々あったけど、練習試合はこれでお開きだな。」







烏野の主将、澤村大地さんが締めてくれて、ようやく片付けもひと段落。








縁下「あ、あなた…………!」


あなた「!」









救急箱を整理していた所に話しかけられて、振り向いた。





力……。









縁下「あの、俺______、」


あなた「っごめん!!」


縁下「……え?」









勢いよく下げた頭。



どんなに謝っても、謝り足りない。










縁下「……何が?」


あなた「力が……ずっと信じてくれてたんだって知って、謝らないと、って、」










ただ、私が怖くなって逃げただけで。




力はずっと、私を信じてくれていた。







なのに、LINEも何もかも、一方的に……。











あなた「本当に……ごめんなさい。」


縁下「……………はぁぁぁあぁ、」


あなた「〜ッ、!?え、ちょっ、力!?」









急に脱力したようにしゃがみ込むので駆け寄ると、心底安心したような顔で綻んだ。











縁下「"もう関われない"とか言われると思って、焦った……!」


あなた「え、なんで……そんなわけ、」













むしろそんな台詞、私が言われるべきだ。




力は歯を出して笑うと、親指をグッと立てた。












縁下「結果良ければいーんだよ!」


あなた「…………〜っ、!」










こういうところ……。




仲が良かった頃の掛け合いを思い出して、心がじわりと暖かくなった。










縁下「LINE見てた?」


あなた「う……ごめん、返せなかった。」


縁下「別にいいから、後で何か送ってこいよ。もう元通り、な?」


あなた「……いい、の?」









私は力を傷付けた。





勝手に思い込んで、勝手に決めつけて。










そんな私が、まだ関わってなんていれるんだろうか。







 



縁下「あなたがいいんだよ。他の誰でもない。」


あなた「…………〜、力ぁぁぁ"、」


縁下「おい馬鹿泣くなッ!!」









両手で頰を包み込んでグイッと持ち上げる。




込み上げてくる涙を堪えて、コクコク頷いた。













黒尾𝓈𝒾𝒹𝑒.°







孤爪「…………何あれ。」


黒尾「んぁ?」








研磨の見ている方を見ると、座り込んでイチャついている2人が目に入った。




"何"って、あれは縁下と花野井さん______、











黒尾「…………あぁ、」












横目で見た研磨の自然と表情で、察しがついた。




自分にしか懐かないと思ってたのかな?











黒尾「焦る?」


孤爪「何に?」


黒尾「アレ。」


孤爪「意味分かんない。なんで俺が?」


黒尾「なんでってお前、そりゃ嫉妬_____、」









まぁ、いいか。





人に言われないと気付かなそうだけど、研磨のこういうの初めてだから様子を見よう。






って言っても、もう合宿も終わるわけだし。








花野井さんの期間限定マネージャーも最後だな。











ブブッ、








黒尾「………………。」








荷物から取り出したばかりのスマホが揺れる。





チラリと画面を見ると、数件の新着メッセージ。














【 今日会いたい 】














黒尾「………………………はぁ、」














面倒くさい。






見なかった振りをして、電源を落とした。













あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°







孤爪「ねぇ。」


あなた「、?」


孤爪「あの人知り合いなんでしょ?」








力とまた会う約束をしてから、業務に戻ってすぐに声をかけられた。




視線の方を見ると、物凄い目でこちらを見ている影山くん。










あなた「えっと、知り合いって言っても中学の後輩ってだけで、そんなに話した事は……。」


孤爪「なんか凄い見られてて、嫌だ……。」












どうしたんだろう。




同じポジションだから気になるのかな……。








そうだ、気になると言えば。










あなた「あの、さ……孤爪くん、」


孤爪「なに?」


あなた「その、さっき言ってた……動画と写真なんだけど、」


孤爪「……これのこと?」












スッとスマホを差し出されて、恐る恐る覗いてみた。




写真フォルダにズラッと並んでいる動画や画像。






一番新しい物は、先ほど流していた山田先輩の自供動画。





……でも。










あなた「……、?お、そわれてる時の写真って、」


孤爪「ないよそんなの。」


あなた「!?」











あまりの発言に驚きを隠せなかった私は、スマホの画面と孤爪くんの顔を交互に見た。





でもあの時、確かに……、









孤爪「証拠があるって分ってて否認する人はいないから、出まかせ言っただけ。」


あなた「______す、凄い……。」











試合でも思ったけれど、この機転。




頭の回転が早いのだろうけど、あの咄嗟によく……、











孤爪「第一、」


あなた「、?」









スマホを返すとそれをポケットにしまって、ムスッとした表情で視線を逸らした。











孤爪「……君が襲われてる時に悠長に写真なんて撮ってられる訳ない。」


あなた「……!」













当たり前みたいに溢した言葉に、胸がギュッとなった。





少なくとも孤爪くんは、山田先輩に対して怒ってくれていて。






それは私の事を、少なからず大切に……思ってくれていたからで。











あなた「ありがとう、。」


孤爪「……?」










私はきっと、あと何度お礼を言ったって物足りないって。







そう、思った。


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