第49話

彼女さんとのご対面
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2022/09/26 01:24
あなた「っえ、縦割りじゃないの?」


横山「そうだよ。前の学校は違ったんだ?」









放課後。





横山さんと合流して向かった美術室で、音駒の体育祭についての情報収集。




どうやらクラス別でチームが出来るのではなく、今回の体力テストの結果からバランス良く1年から3年までが組むのだとか。









横山「運動部が多いと、どうしてもバランス悪くなっちゃうしね。音駒は多分学力別にチーム分けしてるから。」


あなた「そうなんだ……って事は、文化祭もそのチーム?」


横山「そうだね、ただ体育祭ほど縦の交流は無いかなぁ。」










体力テストにそんな意図があったなんて。



チーム分けを前にして、出場種目は明日決めるそうだ。







横山さんはクラス委員なので、その仕切りも任されている。










横山「あ、そこもう終わったの?じゃあこっちの同じ色お願いしたいんだけど……、」


あなた「任せてっ!」











看板までやってくれているのに、多分それをクラスの誰も知らない。




多分お願いすれば、エミリ達も手伝ってくれるんだろうけど……、







横山さんは嫌がりそうだな。










コンコンコンッ








横山「??何の音_______っ、」


あなた「どうしたの?」








廊下と反対側の窓ガラスを叩く音。




美術室は1階にあるから、誰か外にいてもおかしくはないけど……。









切りのいい所まだ塗り終えて、ようやくそちらを向いた。










あなた「____________、」











窓ガラス越しにこっちを見ていたのは運動着姿の赤司先輩で、私と目が合うと驚いたように目を見開いた。





鍵の部分を指差し口をぱくぱくさせるので、意図を汲み取った横山さんが鍵を開ける。












赤司「びっくりした。何してるの?花野井さん。」


あなた「ぇ、あ……、」


赤司「!体育祭のやつか!有志だよね?俺のクラス1人もやんねぇのッ。」


あなた「そう、なんですか……。」










チラッと横山さんの様子を伺うと、特にクラスの女の子たちのように赤司先輩に見惚れるようなこともなく、作業に戻っている。



私も戻ろうと軽く会釈をすると、「あ、そうだ。」と呼び止められた。






もう一度顔を上げると、今度は窓の柵を越えて美術室に入ってくる先輩。





床に足をつける前にしっかりと外履きを脱いで、こちらにやってきた。







思わず身構えてしまう体に気付かれないようにと視線を逸らす。












赤司「筆箱忘れてさ。取りに来たんだよ。」


あなた「あー……、」












数秒置いてやっと言葉の意味を理解して、そういえばとエミリ達を思い出した。 





遊びたい……って、なんか言いたくないなぁ。






私の友達が先輩と遊んでみたいって言ってて……って言えば良いのかな?








なんて言えば……、













「え、まって雅樹いるんだけど!」


「マジじゃん!なーにしてんのー?」













渡り廊下から聞こえてきた声に、出しかけた言葉を慌ててしまった。




駆け寄ってきたのは女の先輩数人組で、多分3年生。











赤司「んー?忘れ物!お前ら何してんの?」


「暇だから体育館観に行こうと思ってたんだ〜。雅樹いるならサッカー部観に行こうかな!」


「ちょっと〜今日はクルミがいるんだから、体育館でしょっ?」


赤司「お、彼氏の見物?」


「あんまり来ないでほしいとは言われてるんだけど……もう3年生だし、」










何やら一気に騒がしくなった美術室。





明らかに険悪な雰囲気になっていく横山さんを尻目に、赤司先輩の横からどうにかして離れようと足を動かす。






と、内の1人が私に気がついた。











「え、誰?」


赤司「あー、後輩だよ。花野井さん。」


「_____"花野井"さん?」


赤司「2年に転校生居ただろ?その子。」


「ああ、なるほどね!サッカー部に入ったの?」


赤司「違う違うっ。勧誘中なんだけど全然靡いてくんねぇの。なっ?」


あなた「は、はぁ……、」

















巻き込まないでほしい。







やはり"どうしてこの子が"といった視線を向けられて、居た堪れなくなる。





と、先程彼氏さんの話をしていた偉く美人な先輩と目が合った。




数拍置いて、「花野井さんって、」と口を開く。













「花野井…………あなたさん?」


あなた「っえ……は、はい。」












なんで私の名前を知っているんだろう。




頷くと、「そっか、」と呟いて意味深な表情を浮かべた。












赤司「あ、そっか。彼氏から聞いてた?期間限定マネ。」


「…………まぁ、うん。」


あなた「…………彼氏さん、って、」













首を傾げると、一緒にいた他の女の先輩がその人を庇うように手を伸ばす。




"寄ってこないで"と言われているかのように。













「私、西園寺クルミ。」













お淑やかなその口調と、ふんわりと上げた口角。





確かな美人さん。








……っと、西園寺さんって……どこかで、


















西園寺「男バレ主将の黒尾くんと、付き合ってるの。」
















気のせいだろうか。





いや、特に私はこういうことに敏感だ。










穏やかに微笑むその目の奥にある、確かな敵意に。













言葉が出せなかった。

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