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第1話

恐怖の色
3,748
2023/12/16 12:00
岩泉が電話を終えて店の中に戻ってきて、入れ替わりで花野井さんがお手洗いにと席を立つ。














花巻「いや〜、面白いわ花野井さんっ!」


岩泉「お、もう仲良くなったのか、流石あなただな。」














何食わぬ顔で水を飲みながら頬を緩ませた岩泉。




コイツはあの子のこと、どう思っているんだか。









それより……及川じゃなくて岩泉を、か。













及川「そもそも、なんで岩ちゃんと一緒に居るのさ!まさか付き合ってるの!?」


岩泉「はぁ?んな訳ねェだろ。たまたま会ったんだよ。」


松川「……あ、俺も手洗い行ってくる。」














及川たちの会話も長引きそうだし、ラーメンが来ないうちに用を足しておくことにして俺も席を立った。






暖簾の向こうにある手洗い場は、男女分かれていて扉には温泉のように"女" "男"と書かれている。







丁度女子トイレのドアノブの上部にある鍵の色が青に替わり、花野井さんが出てきた。













花野井「〜ッ、」












俺に気が付いてすぐ肩をビクりと跳ね上がらせると、気まずそうに会釈をしてその場を立ち去ろうとする。









______そういえば、












松川「……ねぇ、ちょっと。」


花野井「!……………な、なんですか、?」













一歩ずつ後ろに下がりながら、俺との距離を確保する。






うぅん……。













松川「大丈夫?それ。」


あなた「え……?」













左手を指さすと、訳が分からないといった風に首を傾げる。






伝えるためにその手を取って、甲を上に向けた。













松川「_____ほら、つねってたでしょ。赤くなっ」


あなた「〜ッいや…………!!!」












バシィッ、と、音がして。







触れた手が勢いよく振り払われたと分かった。










想定外の反応に驚いて、呆然としている俺の目には。















あなた「ゃ…………ッ、〜ッ、ご、ごめ……、」














触れられた部分を庇うように、震えた手で覆いながら。







青白い顔で、ただ俺に謝る彼女の姿が映った。














松川「え…………大丈夫、?」


あなた「、!!」













歩み寄る俺に見せたその顔は、所謂______











あなた「〜ごめんなさい、!」













勢いよく頭を下げると、踵を返してその場を立ち去った。














男慣れしていなくて、触れられることに恥ずかしがっている感じではなかった。










振り払ったあの力は、怒り____、?












いや…………














強張った顔と、震える身体。








荒い息とあの声質は…………、










































松川「……………………"恐怖"、」




















あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°













花巻「ふぅ〜、やっぱ美味いな、ここ!」


岩泉「結局ここに落ち着くよな。」












届いたラーメンを全員あっという間に食べ終わった。





さっきお手洗いの近くで会ったあの人は、戻ってきた時特に何も尋ねることなく、無かったことのように触れてこなかった。





気を張っていれば、大丈夫だと思っていたのに。











左手の甲をチラりと見ると、先ほどまでつねっていたせいで赤くなっている。






あの人は、この事を言っていたんだろう。







きっと、純粋に心配をして声をかけてくれたのだ。







それを、私は______、















花巻「えっ、本当かよそれ!花野井さんマジ!?」


あなた「、え……?」













考え込んでしまっていて、話を聞いていなかった。





驚いたような顔をしている花巻さんに首を傾げると、私の目の前にある丼を指差した。












花巻「それ、2杯目ってマジ!?それで大盛り食ってたの??」


あなた「…………ぁ、」













そっか…………普通ではないよね。





頷くと、「ガチなのかよ!」と大口を開けて笑った。









花巻「よく食うし及川嫌いだし毒舌だし、最高に面白いな!」


松川「……そろそろ店出る?」


岩泉「お、そうだな。」













なんとなく、松川さんからの視線を感じる。




そりゃあ、あんな振り払い方をされたら気を悪くしてしまっても仕方がない。









どこかでタイミングを見て謝らないと……、














5人で手を合わせて、座敷から降りる。







お会計の紙を持ってレジに並び、それぞれ財布を取り出した。












えぇと……醤油の大盛りは、











と、私の財布の開け口を止めるように伸びてきた手。





驚いてその手の主を辿ると、岩泉先輩だった。
















岩泉「俺が誘ったんだから、俺が払う。」


あなた「え、でも……流石に悪いです!」


岩泉「いいんだよ、お前は後輩で、女子なんだから。」


あなた「……、」












真面目な顔でそんな、恥ずかしげもなく言うものだから。






照れてしまわないように視線を逸らして、甘えることにした。








先にお店の外で待っているように言われて、店長さんに挨拶をしてから外に出た。














お母さんにそろそろ帰るって連絡しておこう。








力と帰ると言ったけれど、岩泉先輩との事はどうしようか。






言ったところで意味もないし、聞かれたらでいいか。












ガララッ













私の次に外に出てきたのは、天敵及川徹。













あなた「…………………。」


及川「花野井ちゃ〜ん、俺も方向同じだから一緒に帰っていいでしょー?」


あなた「……なら1人で帰ります、」


及川「そんな邪険にしないでよー。」












ヘラっと笑って、片手に持っていた黒い財布を鞄にしまう。





この人のこの笑い方、好きじゃない。










……でも、もっと嫌いなのは











及川「そんなに岩ちゃんと2人がいいんだ?」


あなた「_________、」










ポケットに手を突っ込んで腰を曲げ、立ちすくむ私の顔に自身のそれを近づける。








何を考えているのか全く読めない目と、不気味に釣り上げる唇の端。







私は、この笑顔が1番苦手だ。















及川「ま、そうだよね〜なんたって岩ちゃんは____」













楽しそうに私の様子を伺いながら、チラりとお店から出てきた岩泉先輩を見やる。







そして、向こうに聞こえないくらいの小声で囁いた。



















及川「_______"初恋の人"……だもんね?」
















































大事な事だから何度でも言う。







私は及川徹が嫌いだ。

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