第82話

逃げ出す背中
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2024/03/09 12:00
母「体に気をつけてね、」


あなた「……うん。」


母「いつでも帰っておいで。待ってるからね。」


あなた「うん。」












岩泉先輩や及川徹と別れて、家に帰り。






東京に戻る時間。








お母さんとお父さんとお別れして、新幹線に乗った。










明日からまた、今の私の日常に戻る。







音駒に戻って、私は先に進まないといけない。










なんだか、宮城に帰ってきてパワーをもらえた気がする。









烏野高校のバレー部の人たちも凄く良くしてくれて、力は変わらず私に接していてくれる。








それに、岩泉先輩と……ついでに及川徹も。











……また、帰ってきたいな。

























あなた「黒尾先輩に、?」


直井「あぁ、今日部活オフで会えねェからさ。アレだったら研磨に渡してくれてもいい。」


あなた「じゃあ、孤爪くんに渡しておくね。」










月曜日の朝。





学兄から、黒尾先輩宛の封筒を預かった。







学年も違えば棟も違う。




どうせ一緒に帰るんだろう孤爪くんに渡しておけばいいだろう。













直井「今日中に渡してくれさえすればいいから。頼む。」


あなた「うん、渡しておく。」













3年の棟に前行った時は大変だったな……。





あの時は孤爪くんがいたけど、私1人で行ける気がしない。









最近は体育祭に向けて赤司先輩は毎日忙しいようで、中々2年の練習に顔を出さないことを謝罪された。





私に謝罪されても、私からクラスの皆に伝えることもできない。









まぁ、赤司先輩が担当の応援係の人もうちのクラスに居るわけだし……わざわざ私が言うまでもないだろう。















































「うぃ〜週の初め、欠席ちらほら居んなぁ。っと〜、井上と……恩田、あそこの席は……孤爪か。」


あなた「……。」


















朝のHR。





担任が出席簿に書き込みながら生徒の積極性を案じている中、私の意識は後ろの席へと注がれていた。










ポツンと空いた席。









孤爪くん、欠席…………。














"今日中に渡しておいてくれれば"









他に頼める人も居ないし…………。








ふと、2年の男子バレー部の面々を思い浮かべる。











田中のそっくりさんと…………何考えるかよく分からないあの人か、









話しかけて内容を伝えてって工程を考えると、潔く黒尾先輩に直接渡しに行って「学兄からです。」と一言言うだけの方が楽そう。






気持ちが。













…………行くしかないか、
























昼休み。







お昼ご飯を食べ終わり、ユウヒ達は日直の仕事があるというので、1人で3年の棟に向かった。









……よく考えてみれば、黒尾先輩を呼び出すところから始まるんじゃ。












確か黒尾先輩は5組__________
















赤司𝓈𝒾𝒹𝑒.°









あれ。











赤司「花野井さん?」


あなた「ッ、」












昼休み。





いつも通りのメンツで購買に行って、教室に戻る途中。






おどおどした様子で5組の教室を覗く女の子の姿が目に入った。












「何、知り合い?」


赤司「あーうん、先行って。」











買ってきたパンの入った袋を渡して、持っていくようにお願いした。







俺に声をかけられた花野井さんは、強張った表情を少しだけ緩める。












赤司「どうしたの?誰かに用事?」


あなた「く、黒尾先輩……に、」
















また黒尾か……。





手に持ったA4サイズの封筒。






恐らくこれを渡したいのだろう。










赤司「俺が代わりに渡そうか?」


あなた「え、あ__________、っあ、」













きょとんとした顔をした彼女は、俺の後方に視線を向けると目をぱちくりと瞬かせた。






視線の先に振り向くと、数人組で教室に戻ってきた黒尾。










タイミング…………。








黒尾「__________、」












花野井さんに気が付いたようで驚いた顔を一瞬見せた黒尾は、次にその隣に立つ俺と目を合わせ、立ち止まる。











あなた「ぁ…………黒、」


黒尾「………………あ、俺飲みモン買い忘れたわ。先行っててくれ!」


「はー?」











……?








半ば不自然に、俺たちから視線を逸らし。







言葉を発そうと口を開いた花野井さんを他所に、踵を返した。














赤司「…………なんだアレ。」


あなた「…………、」














花野井さんが避けられてる?






いや、考えすぎか。








でも、いつもの黒尾なら花野井さんがここにいる時点で話しかけに来ると思ったんだけど_____
















あなた「〜ッ、」


赤司「え、」
















何やら考え込んでいた様子の花野井さんは、意を決したかのように走り出した。








小走りに遠のいていく黒尾の背を追いかけて。

















赤司「…………なんだアレ。」



















黒尾𝓈𝒾𝒹𝑒.°










ぅわー…………今の、明からさま過ぎたか?







階段を降り、見えなくなったところでしゃがみ込む。








もっと上手い避け方があったんだろうけど。











タッタッタッタッ、










黒尾「……?」













上から聞こえる荒っぽい足跡に、顔を見上げた。

















黒尾「〜ッ、」











階段の1番上から、俺を見つけその足を止めた花野井さんが目に入り。

















あなた「〜ッあ、」















俺は思わず、駆け出していた。

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