第75話

昔の因縁
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2023/12/08 12:00
花巻「"追っかけ"……?て、よくいるお前のファンか?頭おかしいやつ?」


及川「ちょっと、女の子達に失礼でしょうが!」











「そう、あれは中学2年の頃_______」と、ご満悦の様子で語り始めた。






まぁ、根も歯もないことを言い出したもんならこの水をぶっかけることにしよう。







ひとまず話を聞くことにして、手元にある水の入ったグラスを手に取った。


































"あれは中学2年の春________"






"練習でも、試合でも、普段の学校生活でも、至る所で見かけるその子は、俺にとってはその他大勢の1人だったんだけどね"


























及川𝓈𝒾𝒹𝑒.°











ま、練習を見にきてくれる程度じゃ名前と顔なんて覚えられないけど、俺がその子のそれを認識するのは早かった。







ちょっとだけタイプの顔してたから。












『ねえねえ、最近よく練習見にきてくれてるよね?バレー好きなの?』


『おい及川自意識過剰だからやめとけ。』











岩ちゃんと部活に行く途中、廊下でたまたま遭遇したその子に声をかけたら、耳まで真っ赤にして走り去っていった。





可愛い反応。





ま、俺に釣り合うかって言ったら分かんないけど、告白してきたら考えてもいいかも。









それから、学校で会ったりするとよく話をするようになった。









彼女は一つ年下の学年で、友人も多いようだった。






男女分け隔てなく、その明るい性格と笑顔で、常に周囲には人がいた。








ただ、俺たちが話しかけるといつも、恥ずかしそうに頬を赤らめる。







可愛い。















『岩ちゃん、俺決めたよ!!この春休みにあなたちゃんに告白する!!』


『はぁ?』











もうすぐ3年生。





彼女と出会ってから1年近く経つと言うのに、一向に告白をしてくれる気配がない。








奥手にも程がある!















『その……あなたちゃん、話があるんだけど。』


『及川先輩?どうしました?』


『その……俺、あなたちゃんの気持ち、本当はずっと前から気付いてたんだ。』


『え………、!?//』


『だから、良かったら俺と……付き合ってみない?』


『________________はい?』


『……へ?』































松川𝓈𝒾𝒹𝑒.°










及川「俺はあの時の顔を今でも夢に見る!!!」


あなた「……勝手に思い起こさないでください。気持ち悪い。」


花巻「ん??で、どうなったんだよ、両想いだったんだろ?」












どうにも及川の話だと、今この子がこんなにも邪険にしている理由に結びつかない。





花巻が興味津々に尋ねると、及川は唇を噛み締めて作った握り拳をさらに硬くさせた。












及川「それが…………信じられる!?この子________、」










及川は水の入ったコップを持ち上げた花野井さんの手を押さえながら、俺たちに鋭い目を向けた。

















及川「______岩ちゃんのことを好きだったんだよ!!」


















岩____________







ん、?







つまり……今まで自分のファンだと思って告白した相手は、







自分ではなく隣の岩泉を見ていた、と……。











花巻「ぶわっははははははは!傑作!傑作だな!!」


松川「及川……その勘違いは恥ずかし過ぎるぞ。」


及川「うっるさいなぁ!まさか岩ちゃんだと思わないでしょ!どう考えても俺の方がカッコいいのに!!」


あなた「及川先輩の顔はタイプじゃありませんし、中身がそもそも腐っているので眼中にもありません。」


花巻「ぶっほぉっ!〜ッ、及川……っ、ドンマイー!!」


及川「もうマッキー!!」












笑い転げる花巻と、気分の悪そうな顔でそっぽを向く花野井さん。






なるほどな……そんな過去が。







ん……?でも、それだけでこんなに毛嫌いするか?









人1人分空けた隣をふと見ると、何故か少し震えた肩に違和感を覚えた。





……?












目線を下にやると、膝の上に置いた片手の甲をもう片方の手でキツくつねっている。














花巻「で、そっから及川のこと嫌いになったの?」


あなた「ッ、」










花巻に話しかけられ、その指の力をキュッと強めたような気がした。

















あなた「…………ぃぇ、この人、」


















岩泉を好きだと言った後。









『〜ッ、俺という男がいながら、岩ちゃんに心奪われていたなんて許せない!!』












プライドを傷付けられた及川は、あろうことか逆上。













『絶対、卒業までにあなたちゃんを落として見せる!!』
















そう宣言され、以降学校生活でも放課後でも、しつこく構われるようになったのだとか。














あなた「この人……こんな感じなのに何故か人気があったので、」


及川「ちょっと!!何も不思議なことじゃないでしょ!」


あなた「…………取り巻きの女子生徒たちから目の敵にされて、暫く大変でした。」











あぁ……それは、















花巻「そりゃ嫌いになるわっ!こんな奴にしつこくされるなんて可哀想過ぎるだろ。」


及川「なんで!?この俺に構われるんだよ?こんなに名誉なことないでしょ!皆が花野井ちゃんのこと羨ましがってたからね!?」


松川「ほらほら及川、花野井さんゴミ虫見るような顔してるから。」


あなた「…………ご、ゴミ虫に失礼です、」


及川「そろそろ泣くよ!?」















しかし……及川じゃなく岩泉をずっと見ていたのか。








まあアイツ、男の俺たちからしてもたまにめちゃくちゃカッコよく見えるしな。














花巻「そーいや、なんで及川は花野井さん名字で呼んでんの?」















ケラケラ笑っていた花巻が、手元の水を口に含み喉を鳴らして尋ねた。


















及川「………………『次名前で呼んだらバリカンで剃ります』って言われた。」


花巻「ぶっははははは!!!」

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