第78話

先輩と後輩
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2023/12/20 12:00
花巻「じゃ〜な!花野井さんも、またいつかラーメン行こーな!」









「はい。」とは言わないまま、手を振って花巻さんと松川さんとお別れした。






残ったのは岩泉先輩と、及川徹と、私。








帰る方向が一緒だし、岩泉先輩もいるのでもう仕方がない。







3人で帰ることに渋々了承し、帰路についた。










岩泉「あなたさ、今の高校楽しいか?」


あなた「え?」










他愛無い話から突然の質問に、思わず聞き返してしまった。




まだ、烏野でのことは何も言えていない。









少し考えて、ユウヒやエミリの顔が頭に浮かんだ。







楽しい……と、思う。





少なくとも、友達に恵まれた。








昔と変わってしまった私とでも、友達になってくれる人がいた。








頷くと、「そうか。」と安心したように息を吐く。





どうしてそんなことを聞いたのか、分からないまま無言の時間が続いた。










及川「流石の東京の高校にも及川さん以上のイケメンはいないでしょう?」


あなた「…………。」


及川「岩ちゃん、」


岩泉「今の高校、及川みたいな顔だけいい奴いんの?」


及川「なんか聞き方に悪意ない!?」


あなた「あー……顔だけ、」










一番に頭に浮かんだのは、及川徹と同じく人気を誇っている赤司先輩。






だけど……。










あなた「じゃ、ない人です……。」


及川「なに!!?」


岩泉「…………へぇ、お前が素直に男の顔褒めるって珍しいな。」











私の返答に、驚いたような表情を浮かべた2人。





赤司先輩はきっと、顔も勿論だけどそれだけじゃなくて。









怖がってばかりで、会話もまともに出来ない私なんかに、いつも優しくしてくれて、助けてくれる。










いい人……だと、思う。












及川「花野井ちゃんは騙されてる!!ソイツは詐欺師だよ!」


岩泉「おい知りもしねェ奴のこと悪く言うな。」


あなた「……詐欺師顔はどう考えても及川先輩でしょ。」










まったく……。













岩泉「…………なぁ、あなた。」


あなた「はい……?」


岩泉「今、俺になんか出来ることあるか?」


あなた「え?」










出来ること……?





質問の意図が分からず首を傾げると、岩泉先輩は困ったように首の後ろを掻き口を濁した。








岩泉「あー……なんか、大事な時に何もしてやれなかったっぽいから。」


あなた「…………、」











多分、東京に転校したことを言っているんだ。







違う。







先輩が何も出来なかったんじゃなくて、私が人に頼る事ができなかったんだ。







たった1人の男の人に酷いことをされて、それだけで周りの男の人を誰も信用出来なくなって、好きだった岩泉先輩の事でさえも、怖いと思ってしまっていた。








私が、悪いんだ。










首を何度も振る私に、先輩は「それでも」と続けた。











岩泉「お前の先輩として、場所が離れていても頼られたら嬉しいし、頼って欲しいって思ってんだよ。」


あなた「岩泉、先輩……、」


及川「勿論俺もだよ!!及川さんは花野井ちゃんの永遠の味方!」












初めは、バレーに一生懸命な顔と笑った無邪気な顔のギャップに恋に落ちたんだけど。







きっと、それ以上に好きになっていったのは…………こういう、優しさも大きかったんだろうって。









それに、このままじゃ多分引き下がってくれない。







一度言い出したら聞かないのは、もう知ってしまっている。











あなた「________それじゃあ、」

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