ATTENTION
この小説は、実在する人物、地名、団体などなどあらゆるものとは一切関係ありません。ただの作り話です(適当)。そのことを踏まえてご覧頂かないと、今すぐあなたがこれを見ている電子機器が爆発し、あなたの真下の床か地面がパカッと開いて下に落下します(適当2)。くれぐれもご注意くださーい(適当4976794)。
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2020年7月某日。
燦々(さんさん)と降る陽の光の下(もと)、私はとある書店に向かって歩いていた。
辺りには背の高いビルが建ち並び、蒼(あお)い空をその窓ガラスに反射させている。アスファルトからは水気の無い熱気が立ち昇り、私の身体に汗の放出を促(うなが)している。
私は、東京が好きだ。
直線的なようで所々には植物があり、無感情な冷たい街に見えるが実は情に溢れた街。雨の東京も、カラッと乾いた東京も好き。ただ、蒸し蒸ししてるのは嫌いだけど。
大通りから路地に入る。暫(しばら)く進み、もう一度曲がってまた暫く進むと一つの書店が現れた。
大通りでの車などによる喧騒(けんそう)は、嘘のように消え失せている。
書店には、一般世間では小豆色やワインレッドなどと呼ばれるであろう深い赤の庇(ひさし)があり、金の明朝体で「胡蝶殿書店(こちょうどのしょてん)」と店名が記されている。
ガラス張りの扉を開くと、冷たい人工の風とバラの香りが暑さを帯びた外の空気に溶け出した。
店の奥に人影を捉(とら)え、挨拶(あいさつ)する。
この店の店主、深月真理亜さんだ。茶色いロングヘアをなびかせながら、こちらに駆け寄って来る。今日も美しい。目の保養になる。女神だ。
この書店ではアルバイトをしているのだが、仕事といえば本の整理、お客さんの相手、あとは……本を読んだりだらだらする事?即(すなわ)ち仕事はほぼ無い。
休憩室で記録簿に現在時刻と名前を書き入れ、勤務時間を記録する。そして真理亜さんの淹れてくれたアイスコーヒー(ちなみにブラック)を飲んでいると、チリリン、と鐘の音が鳴った。お客さんがドアを開いたと言う事だ。
近くに座り、万年筆で本の取り寄せ書を書いていた真理亜さんが椅子(いす)から立ち上がろうとする。
慌(あわ)てて立ち上がる。
再び座る真理亜さん。
私は小走りで店内へと向かった。
そこには、とある女性が居(い)た。
その女性は……
身長が165センチくらいだった。
いや、第一印象少なすぎだろ!と思うかもしれないが、ここで私が咎(とが)められる筋合いは無いなぜなら……。
只今(ただいま)の現在時刻、午後2時。路(みち)に面した全面ガラス張りの壁は南向き。店内は若干の薄暗さを伴(ともな)った空気に満ちており、そう、逆光が生まれる条件が勢揃(せいぞろ)いなのである。よって、身長くらいしかわかる事が無い。私は158センチなので、見上げる形になる。
凛(りん)とした、涼しげな声が聞こえた。が、すぐこちらに気づいた様で、口を閉じた。……と、思う。見えないけど。
近付くと、なかなかの美人だった。気が強そうにやや吊(つ)り目になっている。
女性は、すぅっと小さく息を吸うと、こう言った。
彼女の差し出してきた紙束の一番上にあるポスターを見ると、薄暗がりの中にこんな文字が見えた。
「シェアハウス 入居者募集中!」
続く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!