第5話

0️⃣ × 🦍 神隠しの真相[4]
208
2025/12/16 13:56 更新











0️⃣
最期に、渡したいものがある



彼はその白くて細い手で、甚平のポケットをまさぐった


0️⃣
...手、貸して



なえごらは躊躇いつつ、そっと右手を出した


0️⃣
違う、そっちの手じゃない
 
🦍
え、?......!これ...、
 
0️⃣
...ずっと、これを渡したかったんだ



そう言いながられいまるが見つめたのは、左手の薬指に光るもの


0️⃣
受け取って、くれるか...?
 
🦍
...っ、...当たり前、じゃん...っ!



れいまるの手がなえごらの濡れた頬にそっと触れる





その手はもう、温もりを失っていた





ちりん____鈴が、なる


0️⃣
...お前がその人生を全うして、こっちに来たときにまた、会おう
 
🦍
...ほんとに、また、会える...?



不安でしょうがなかった





今日こうやって会えたことですら、幻なのではないか、と疑っているのだから





そんななえごらを見てれいまるは小さく笑った


0️⃣
お前がちゃんと最期まで生きてくれればな笑
 
🦍
頑張る...ねぇ、まるさん
 
0️⃣
なに?
 
🦍
ありがとう...大好き、っ
 
0️⃣
...俺も、大好きだよ



どちらからともなく近づいた顔は、二人の輪郭を曖昧にした





重なった影を、紫に染まった夕空だけが見守っていた


0️⃣
...ほら、早くいけ
 
🦍
...うん



まるさんに背中を押されて、ゆっくりと足を動かす


0️⃣
....また、遠い未来で会おう...愛してる



ちりん____





最期に聞こえた鈴の音は、皮肉なほど綺麗で、そして...





温かい音がした




























気がつくと、遠くで鳴る十八時のチャイムが、なえごらの耳に柔らかく染み込んでいた






鈴の音ではない。そのことに気づいて初めて、なえごらは現実へ引き戻されたのだと知った






気づけば、細道の真ん中にひとり立っていた





ふと後ろを振り返ると、そこにあったはずの、まるさんを追って下った階段は______











どこにもなかった





まるで最初から、ただの壁と雑草しか存在しなかったかのように、すべてが忽然と消えていた





あれは本当に現実だったのだろうか





そんな疑念がなえごらの胸を覆う





ふと、自分の手が視界に入る





左手の薬指が、夕日を受けてきらきらと光っていた


🦍
...かえって、きた



その小さな光だけが、疑念をそっと晴らしてくれた





あれは夢なんかじゃない、現実だ





自分は確かにまるさんに会って、そして、別れを告げたんだ___

















そういえば、元々自分はみんなとお祭りに来ていたんだ





本来の約束を思い出したなえごらは祭りの会場へと向かった





ちりん____耳の奥で、何度も聞いた鈴の音が木霊する





細道を出た瞬間、ざわめきが一気に戻ってきた


🦞
...あ!いた!!
 
🍈
え!?どこ行ってたの!?
 
🦍
ん、まぁ...ちょっと、...
 
🍫
......まぁ、無事に見つかったんだし、いいんじゃない?



ちょこぺろの視線が、なえごらの左手に落ちる





かすかに煌めく薬指と、その奥にある、どこかすっきりしたような顔





ちょこぺろは何も言わずにふい、と目を逸らした





賑わう人々の声と、祭り特有の音楽が、耳を満たす





四人は何事もなかったかのようにお祭りの会場へと向かった





ろぶすた〜とメロンが喋りながら先頭を歩き、その後ろにちょこぺろとなえごらが続く


🍫
ねぇ、なえごら
 
🦍
なにー?
 
🍫
ここの神社って商売繁盛がご利益じゃん
 
 
🍫
でも...昔、神社が建てられたときは心願成就がご利益だったんだって
 
🦍
心願成就...?
 
🍫
心に深く願うことが、神様の手助けで円満に叶うように祈ること
 
🍫
...叶って良かったんじゃない?
 
🦍
......そうだね



なえごらは空を見つめてぽつりと呟いた


🍫
...なんか、変わったね...いい意味で
 
🦍
うん...まるさんはずっと、ここに居てくれてるって分かったから



なえごらはそっと、自分の胸に手を当てた





ちりん____どこからか、鈴の音が聞こえた気がした


🍈
二人とも何話してんのー?
 
🦞
お腹すいた〜早く行こうよ〜
 
🍫
はいはい...笑



ちゃんと最後まで寿命を全うしてから会いに行ってあげるから





だからさ、ちゃんと見ててよ?まるさん





























0️⃣
これで、よかったんだ____



ぬくもりを失った己の手を見つめながら、そう呟いた





ただの独白のようにも、自身に言い聞かせているようにも聞こえた














この世界死後の世界に生身の人間が来ることは危険だ





一歩間違えれば、現世から存在を消されてしまう





危険だと分かっていても、彼をここに連れてきてしまった





挙句の果てには、泣かせた





自分から誘っておいて、一方的に辛い別れを味わわせて____


0️⃣
俺、本当に最低だな......



ぽつりと、鳥居を見つめて呟いたその一言は、祭りの終わりを告げるお囃子の音にかき消された





鳥居が彼の体に大きな影を落とす





左手の薬指と頬を伝う雫だけが、沈む直前のまばゆい太陽の光を受けて輝いていた



















本当につらい思いをしたのはなえごらだけなのだろうか





れいまるが姿を消してなえごらに近づいた本当の意図は何なのか





果たしてなえごらがこちらに来る際に見たのは、本当にれいまるだったのか















真相は、神様だけが知っている____



















0️⃣ × 🦍 神隠しの真相  𝐹𝑖𝑛.

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