第62話

60.
4,597
2021/06/12 15:12





「うっわぁ、」



ホテルに着けば


全てに驚かされる


広すぎるロビー、


高すぎる天井に、見るからに高そうなソファー



大我「ちょっとまってて、」



そう言ってカウンターに行くきょも


やっぱすごいな、なんて思いながら


周りをぐるぐると見渡す


ソファーに飛び込みたい気持ちも何とか抑え込んだ



大我「はい、あなたの部屋の。一応ね。」



そう言って渡される鍵



「ありがとう」



しっかりと握りしめた


部屋に入って荷物をまとめる


窓からの絶景につい見とれてしまった


病院の窓からの景色はどんなものだろう


どれだけ綺麗でも


きっとこの景色には敵わない。


目に焼きつけるようにただただ眺める



「わ、」



突然後ろから抱きつかれ


そんな声が出た



「恋人みたいなことしないでよ、」

樹「消えちゃいそうだったから」



それから私の首に顔を埋める樹



「まだ消えないから」



そう返せば


抱きしめる力が少し強くなった気がした



北斗「何してんだよ」

樹「あなたが消えちゃいそうだったから抱きしめた」

北斗「理由になってねぇよ」



なんて、北斗まで私の部屋に入ってくる



「そんな普通に入ってくることある?」

北斗「まあ、合鍵貰ったし」

樹「なんかあった時のね、」

「なんかなくても入ってきてるじゃんっ、」



なんて言うくせ、


少し嬉しかったりする


私も何かあった時ように


みんなの部屋の鍵は貰っている



「ご飯は?」

北斗「まだだよ」

「そっか、」



そう返して視線を外に戻す


さっきより少し暗くなった世界に


また惚れてしまう



「北斗、」

北斗「ん?」

「夜、少しお散歩しに行こ」



こんな世界をもう少しだけ楽しみたいと思った


笑い声の交じった返事が聞こえた



北斗「いいよ」

樹「俺も行く」

「みんなで行きたいな、」

北斗「言っとくよ」



そんな北斗に


「ありがとう」と返したあと


樹の腕を解く


私の羽が動かなくなるまで、


めいっぱい羽ばたいてやる


力尽きて落ちていく方がかっこいいだろう

















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