第43話

41.
5,037
2021/05/17 15:16





病院の廊下に1人。


長いソファに腰かける


手の中の缶コーヒーは


ゆっくりと震えた手を温めていた


気づけばスマホの画面を開き、


誰かに助けを求めようとしていた。


きっと、SixTONESはみんな優しいから、


仕事中でも、どんなに忙しくても、


出てくれる


それでも何となくかけることが出来なかった


今、この崩れそうな心を


少しでいいから支えて欲しくて、


画面を何度もスクロールしては


また1番上まで戻る


そんなことを繰り返しているうちに


いつからか伝えられた


樹からの伝言を思い出す。


なんの躊躇いもなく画面をタップして


耳にスマホを当てた



___「なに?どーした?」



大切な人の、大好きな人の、


声を聞くだけでこんなにも安心する



「ごめんね、翔太の声、聞きたくなっちゃって、」



そういえば


なんとも言えない笑い声が聞こえてくる



「仕事中だった、?よね?」

___翔太「ううん。大丈夫。」



なんて言いながらも


電話越しは何やら忙しそうだった



「ごめん、やっぱ切るね。声聞けたから十分」



笑い声を混じえて


そういう私に



___翔太「お前さぁ、」



なんて呆れたような声と言葉が返ってくる


少し、北斗と重なった気がした



___翔太「SixTONESにかけれなくて俺にかけたんだろ?」



お見通し。なんて言いたげな


言い方で


電話越しにそう言う翔太



「迷惑かけたくなくて、」

___翔太「お前泣いただろ」

「えっ、?」

___翔太「声。」



その場で固まって、


ただただこの空間と、この瞬間を


きちんとかみ締めた


どれだけ残酷な未来があろうとも、


いま、こんなに嬉しいことが起こってる


言葉にできない喜びに


思わず笑みがこぼれる



「なんで分かるのっ、」



そんな私の声に


ガハハっ、と笑う声が聞こえる


ひみつ。、なんて言う翔太は、


やっぱり敵わないくせに


どこか子供っぽい。


だけど、こんな彼に何度も助けられてきた


そして、今だって。



「今からね、検査なんだ。」

___翔太「どんなこと言われても負けんなよ」

「絶対勝ってやる」

___翔太「ん。」



そんな会話を交し、


電話が切れた。


胸を張って生きて抜いてやる。


まずは、自分に勝つことからなんだ








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