樹side
ただその場に立ちつくすあなたに
大我「言える、?」
なんて言いながら顔を覗くきょも
そんな問い掛けに何も答えない
ただただ下唇を噛み締めながら
じっと固まる
誰よりも脆い癖に、
誰よりも強がろうとする
俺らにさえ頼ろうとしない、
それぐらいいんだよ?
メンバーなんだからさ、
どんなに泣きわめいても、
どんなに甘えてきても、
全部受け止めるに決まってんのに
やっぱり彼女には伝わらない、
泣きたい癖に、
怖くて仕方ないくせに、
今この瞬間も、
自分を押し殺そうと必死なあなたを
見てられなかった
気づけばあなたの腕を掴んでて
そのまま抱き寄せる
樹「翔太、あなたあと1年しか生きれない」
あなたの体はやっぱり震えてた
翔太「は、?」
固まる翔太に
樹「だから、活動休止すんの」
と、言い切る
「多分もう戻らないけどねっ、」
俺の腕の中でそう付け足すあなた
相変わらず下手くそな作り笑顔だった
大きなため息を吐いたあと
あなたの方を向く翔太
翔太「ごめん、2人にしてもらっていい?」
樹「ん、わかった」
北斗があなたの頭を優しく撫でてから
部屋を出ていく
俺も離れようとすれば
くい、っと裾を掴まれる
そんなあなたを見れば
親と離れたくない子供のような顔をして
じっと俺を見つめる
きっと最近よくあなたの頭を撫でるのは
不意に見せるこの子供みたいな顔のせいだろう
樹「怖い?」
「そうじゃなくてっ、」
背の小さいあなたに合わせて
少ししゃがむ
本当に子供の相手をしてるみたいだった
「どうしようっ、ちゃんと言えなかったら、」
樹「大丈夫だって」
笑いながらそう返せば
やっばり悲しそうな顔で俺を見る
「後で抱きしめてね、」
普段なら絶対そんなこと言わないのに
理性を保つのでやっとだった
誤魔化すように笑って
樹「いいよ」
と返す
それから俺も部屋を出た
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。