第64話

62.
4,535
2021/06/14 20:37





おなかいっぱい夜ご飯を食べたあと


部屋に戻れば


すぐにドアが開く



「なにもぉ」

北斗「薬飲んだかの確認」

「飲んだよ」



薬ケースの場所も把握している北斗は


手際よく取り出し確認する



北斗「飲んでねぇじゃん」

「だって飲みたくないもん」

北斗「だめ」

「やだ」

北斗「ほら、こっち来て」

「いやだ!」



子供みたいに反抗して


ドアの方へ逃げる



北斗「おぉい!!!まてこら!!」



後ろから聞こえたそんな声に


キャッキャっと笑いながら逃げる回る



樹「うお、何してんの」



タイミングよく入ってきた樹を盾に


後ろに隠れる



樹「なにしてんの、」

北斗「あなたが薬飲まない」

「だって飲みたくないもん!」

北斗「だからダメだって!」



捕まりそうになる直前で


樹の後ろから抜け出し


ベットの方へ逃げれば


ギリギリで捕まる


そのまま2人でベットに倒れ込んだ


また自分の状況も忘れてはしゃいだせいで


これだけで息が上がった


胸を大きく上下させ息を整える



北斗「ったく、」



それから私を挟むように樹も隣に寝転がる



「はぁ、疲れたぁ」

樹「お前病人なんだから」

北斗「ほんとだよっ、」



呆れたように笑いながらそういう北斗


それにつられて私も笑えば


なんだかおかしくなって


3人でケラケラと笑う



北斗「ほら、薬飲むぞ」

「えー、」

樹「なんでそんな嫌なの、」

「美味しくないもん」

北斗「美味しい薬なんてあるか」



なんて、ありがちなセリフを言うけど


ほんとの理由は違ったりする


私の中で幸せなまま死ぬ事が理想だった


あんな、病院のベットの上で苦しんで死ぬより


こうして、笑い合いながら


幸せだって噛み締めながら、


死んでいきたかった。


薬を飲めば死ぬタイミングが狂うような気がしてしまう


なんて、そんなことは言えないし、


そんなことをする勇気もないから、


北斗に渡された薬を水で流し込む



北斗「あー、して」

「あー」

北斗「よし」

樹「お前赤ちゃんかよ」

「ばぶー」

樹「やっば」

北斗「はいはい」

樹「今のあなたガチ可愛かった」

北斗「何言ってんだよ」

「ほんとそれな」

樹「え?」



そんなテンボの良い会話に


また、けたけたと笑う


ああ、薬なんて飲まなきゃ良かった。


死ぬ絶好のチャンスだったのに






















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