第7話

5.
7,355
2021/04/01 14:50





いつもと同じ部屋に通され


何も変わりなく説明をする


ふらつくことが多い


とか、


物忘れも多くなった


とか、


ただの相談部屋みたいになってしまい



『あ、でも、疲れてるだけですよね、』



と、慌てて、距離を置く



『わかってるんですけど、ちょっと多いなぁって、』



へへ、なんて言って


何となく笑ってみたものの


笑っているのは私だけらしく



医師「すいません、もう一つだけ検査よろしいですか?」



なんて、如何にもと言った感じの声が


私にそう訪ねてくる



『え、?』



まさか、このまま帰れると思っていたのに


もう少しここにいることになるらしい


この建物自体から早く出たかったのに


なんなら家に帰って樹とジェシーでも招こうかとさえ思ってたのに


そんな私に、念の為ですので、


とだけ言って


そそくさと部屋から追い出された


そして、したこともないような検査が終わり


入ったことの無い部屋に入る


さっきの部屋とは少し違う


どことなく緊張感で溢れていた


そんな空気感の中


ぺこ、と頭を下げてから


ゆっくりと椅子に腰かける



医師「成宮さんですね」

『あ、はい』



そう言ってぎこちなく頷くと


さっきの検査の結果だろうか、


手際よく写真や数値の書いてある資料を次々に出す


そして、私の前に綺麗に並べる



医師「ここ、見て貰えますか」



そう言われ


お医者さんが指す指の先を見る


だけど、結局見たところで分からない


分からないまま頷いていれば


どんどんと話が進んでいく


何も話してるのかも、どんな内容なのかも


ほとんどよく分からなかった


ぎこちない相槌を打ちながら


じっとお医者さんの言葉に耳を傾ける


そして、


唯一聞き取れた言葉、



「つまり、単刀直入に言いますと、もって1年です。」



ただそれだけだった


最後にそれだけ、


その一言だけは1音もかすれることなく


耳に入ってきた
















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