第42話

40.
5,086
2021/05/16 16:19





今日は通院の日、


いつもは誰かが着いてきてくれるけど、


今日は1人。


みんな仕事だ、


私も今頃キラキラアイドルやってるはずだったのに


なんで病院なんかに来てるんだろう


番号札を取り、


適当に腰掛ける


大型テレビを眺めたって、内容は頭に入らない


こんなに大勢の人がいるのに、


ひとりぼっちな気がして、


誰にも見えてないような気がして、


心がきゅう、と痛くなる


こんなはずじゃなかったのになぁ、


検査までのこの時間は


毎回、意味もわからず鼓動が早くなる


落ち着かなくなって、喉がカラカラになるのだ


まだ呼ばれそうにないことを確認して


そっと席を立つ


大きな部屋を出て自販機へ向かう途中だった


急に足に力が入らなくなって


ガクン、と膝が曲がり


そのまま床に倒れ込んでしまった


パニックからか、不安定な呼吸に


もっとパニックになる



「え、あ、大丈夫ですかっ、!、」



そんな声がして、


誰かも知らない、同じ歳ぐらいの男の人に


優しく背中を撫でられる


落ち着いてきた体に何とか言うことを聞かせ


足に力を入れる



「ごめんなさいっ、ありがとうございます、。」



そう言って頭を下げ


恥ずかしさと、自分の惨めさに、


腹が立って


素っ気なくお礼を言って立とうとすれば



「どこか、悪いんです、か、、?」



なんて声が聞こえる、


なんでそんなこと聞くんだろう、


見ればわかるでしょ


かっこ悪い、こんな廊下のど真ん中で


毎日のように泣いているせいか


もう自分が泣いてることにすら


気づかなくなっていた



「そうです。もうすぐ死ぬんです。少し前まではすごい笑ってたんですけどねっ、」



もう、全てに呆れていた


鼻で笑いながらそう言い放った私に


何も言わずに固まる男の人


可哀想とでもなんとでも思ってくれればいい


勝手に干渉されて、


勝手に同情されて、


そう思っていたのに



「ずっと応援してますっ、。また、ステージで輝いてるところ見せてくださいねっ、!」



それだけ言って


どんどんと私から遠ざかっていった


最低だ。


悲しませたくないのに、


もう誰も。


自分勝手な感情に任せて、


馬鹿みたいなことをした


アイドル失格だな、


そしてまた自分に呆れた














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